今年の9月1日は、例年以上に防災関連の報道が多かった気がする。10万人以上の犠牲者を出した関東大震災から100年の節目に当たるからだ▼日本で起きた自然災害としては最大の犠牲者を出した震災は、在日韓国人にとってもう一つの顔を持つ。震災後の混乱の中で起きた朝鮮人虐殺である。「朝鮮人が放火している」「朝鮮人が井戸に毒を入れた」といった流言飛語が広まり、”自警団”に殺された被害者の数は、数百とも数千ともいわれる▼その悲惨な記憶に、100年後の今でも追い打ちをかけるのが「虐殺はなかった」との主張である。当時の報道や残された証言から、殺害がなかったと否定するのは難しい。死者の数をめぐる論争も、問題の本質をとらえているとは言いがたい▼民団は各地方本部で、追悼式を開いた。どの式典も粛々と行われたという。この祈りは、9月1日が訪れるたびに繰り返されるだろう▼韓日両国は隣国であり、それゆえにさまざまな歴史を共有してきた。その歴史の交差点で起きたことは、どちらから見ていたかによって見え方が異なるのは否めない。虐殺の真相究明は続けられているが、韓日の対立につなげてはならない▼韓国の左派勢力は、虐殺問題を第2の徴用工や慰安婦問題へ拡大しようと扇動しているが、プロパガンダに踊らされることなく冷静に判断すべきだろう。韓日両国の関係を、二度とこのような悲劇が起きないように、両国民が中心となって友好的なものに育てていく以外に方策はないのである。