少子化対策に手詰まり感

韓日とも有効な手だてなく
日付: 2023年09月05日 09時46分

 韓国で深刻な社会問題となっている少子化を改善するため、乳幼児の保育予算が拡大される。今年初めて導入された親への給付型支援金では、0歳の子どもを持つ親には70万ウォン・1歳児には35万ウォンが支給されていたが先月23日、来年から100万ウォン・50万ウォンに増額すると発表していた。一方で直近の韓国メディアの報道では、効果を疑問視する声が多く上がっている。少子化対策の背景を日本の保育支援事情と比較しつつ、論点を整理していきたい。

 韓国統計庁が先月30日に発表した「2023年6月の人口動向」によると、4~6月期の合計特殊出生率は0・70人で、1年前より0・05人減った。昨年生まれた新生児は25万人を割った。
経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち合計特殊出生率が1人未満の国は韓国が唯一である。22年実績では、OECD加盟国のうち韓国の0・78人に次ぐ下から2番目であるイタリアの合計特殊出生率は1・24人だった。

■政策に盛られた保育支援

子育て支援のための給付金だけでなく、育児休暇中の有給期間を6カ月間に増やしたり(新生児を迎えた両親がそれぞれ3カ月以上の育休を取得した場合に限る)、子ども用家具の購入代金を含めた住居手当も政策に盛り込まれるなど、支援は未来に向けて手厚く準備されている。
与党「国民の力」の企画財政部が先月29日に発表した24年予算案では、出産世帯の住居安定事業に9兆ウォンを割り当て、今年の予算比で2兆1000億ウォン増額した。

■効果を疑問視する声も


韓国政府はこれまでも、さまざまな出生率向上のための政策を展開してきた。06年からの15年間で380兆ウォンを超える予算が注ぎ込まれている。
しかし、合計特殊出生率0・70人が示すように、十分な成果が得られない状況が今日まで続いている。「子どもを産めばお金を払う」という形式の出産奨励政策が少子化問題に功を奏すかという点を疑問視するメディアの声は大きい。

■待機児童解消の背景


日本の岸田文雄内閣は「異次元の少子化対策」と銘打ち、韓国と同様に少子化改善に向けさまざまな対策を講じている。
来年10月から実施予定の「こども未来戦略方針」が今年6月13日に閣議決定している。
こども家庭庁の1日の発表によると、保育所などの待機児童数は過去最少となる2680人を記録した。
待機児童問題のピークであった17年の2万6081人と比較すれば10分の1程度になった点など、少子化対策の政策が功を奏したようにもみえる。しかし、実際は出生数と受け皿の増加が相まっての数値であることに、日本のメディアは注目している。
韓国や日本など、少子化が深刻な社会問題となっている国で重要な点は、政策として打ち出された支援の恩恵が数値上に反映されるまでに長期間を要することだ。
批判的な報道や数字に一喜一憂して政権の足を引っ張るべきではないという点に、留意しておく必要があるだろう。

 


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