福島処理水を海洋放出

国内外で根強い反対も
日付: 2023年08月29日 12時59分

 東京電力は24日から、福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出を始めた。放出は30年ほど続く見通し。国際原子力機関(IAEA)は安全性に問題はないとしているが、国内外の一部から根強い反対もあり、設備の安定的な運用や風評被害対策がカギとなりそうだ。
放出開始を受けて韓国では、野党や左派系団体が主導した反対デモが国内各地で発生。ソウルの日本大使館が入るビルに乱入した大学生16人が警察に拘束された。済州島の日本総領事館前では、最大野党「共に民主党」など野党6党が、海洋犯罪行為と非難した。
韓国の韓悳洙首相は、日本に向けて「透明かつ責任を持って情報を公開することを期待し、促したい」と談話を発表した。
中国では同日から日本産水産物の全面輸入停止を発表した。これに対し外務省の岡野正敬事務次官は、中国の呉江浩大使に電話で抗議し、早期撤廃を強く求めた。
日本では共産党と社民党が放出中止を訴えている。
福島の汚染水は多核種除去設備(ALPS)で浄化処理され、大半の放射性物質が取り除かれるが、トリチウム(三重水素)だけは除去できない。このため海水で100倍以上に希釈し、国が定めた排水基準の40分の1未満まで濃度を薄めて海に流す。現在1千基余りのタンクに保管されている。
トリチウムは各国の原子力施設から海洋放出されているが、人体や環境への影響の報告例はない。


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