あすか信組 好決算牽引のヒット商品

外国人向け住宅ローン好調
日付: 2023年08月29日 12時48分

 コロナの5類移行による日常生活の回復や訪日客・海外渡航者の増加などもあり、景気が回復基調にある。在日韓国人信用組合協会加盟の各金融機関の最新の決算も、そろって好調だった。このうち東京など東日本を基盤とするあすか信用組合は、2022年3月期の決算で、預金額、貸出金額とも過去最高をたたき出した。好調を牽引したのが永住権のない外国人向けの住宅ローン。同業他社の商品展開が遅れている分野で、発売以来申し込み件数が増加している。

 永住権のない外国人専用住宅ローンは、本人か家族が居住するための住宅の購入、建築、リフォームなどのため、1億円以内で融資を行う。2年以上続けて同じ勤務先に在勤しているか、2年以上安定収入のある個人事業者で、60歳以下の人が対象。変動金利で、現在は年利1・45%。
あすか信組の調べによると、同様の商品はノンバンク系を含む金融機関でもごく少数しか取り扱っていないという。この背景について、同信組業務推進部の富居孝光次長は三つの理由を挙げる。
まず「本国に帰国して日本に戻らず、回収不能になるリスクが懸念されている」ことがある。次に「住宅ローンを組むとき、保証会社をつけるが、永住権のない外国人に対しては、対象外なケースが多い」こともある。三つ目に「日本に長年定住していても、複雑な法律知識を要する日本語の理解が不十分なことが多いので、金融機関が外国人を敬遠する。それとともに、利用者にとっては審査が厳しくローンを組みづらいので、住宅購入を諦めてしまう」といった条件が重なることが、参入が少ない要因となっている。
あすか信組では韓国系金融機関として、これまで他社では融資のハードルが高いレジャーホテルや、パチンコホールなどの遊技業へ積極的に貸し出しを行ってきた。ほかにも、日本の金融機関の進出が手薄な分野への融資を模索してきた。
外国人向け商品の強化もその融資方針の一環で、21年4月から同住宅ローンの販売を始めた。同年7月には国際営業部を新設して、外国人向け融資に一層注力するようになる。
これまでの同住宅ローンの契約者は、韓国人を中心に多様な国籍の外国人が顧客となっているが、最近は中国人の伸びが著しい。同商品について富居次長は「売れ行き好調で、外国人向けヒット商品」という。
通常の住宅ローンより高金利なので、同信組にとっては利益率が高いメリットがある。一方で利用者にとっても、他社の外国人向けローンに比べ低金利で融資枠も大きく利用しやすい。
最近はさらに商品に改良を加え、途中で契約者が永住権を取得した場合、永住権所持者向けのより低金利の商品に借り換えできるようになり、ますます利便性が増している。
以前、途中で永住権を取得した契約者に、他社のローンに借り換えられた苦い経験から開発した。同商品を発売してから2年半ほどだが、「回収トラブルは起きていない」という。
住宅事業者などを通じて販売しているが、契約者にとっての利点が多く、順調に売れ行きを伸ばしている。富居次長は「不動産価格は今後も大きく下落するとは考えにくく、住宅販売は好調に推移するだろう。それに伴い、需要はますます増えるだろう」と予測している。

永住権のない外国人向け住宅ローンのチラシ


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