反転攻勢に出るパチンコ業界

業界一丸でさまざまな施策を
日付: 2023年08月15日 11時24分

 在日韓国人の基幹産業とされるパチンコホール経営が岐路に立っている。少子高齢化と娯楽の多様化により、長期にわたる業績の右肩下がりが続くなか、2020年からはコロナ禍が追い打ちをかけ、倒産が急増している。苦闘するパチンコ業界だが、コロナの5類移行で日常生活が戻った今、底をついた業績のV字回復を果たしつつある。市場環境の厳しさは続くが、庶民の娯楽を次世代につなげるための数々の施策で反転攻勢に出ている。

4社に1社が消滅

 日本生産性本部のまとめた「レジャー白書2022」によると、パチンコホールの市場規模は13年から20年まで8年連続で右肩下がりとなっている。21年は14兆6000億円で、前年比ほぼ横ばいで長期下落に歯止めがかかった。しかしコロナ禍によって20年は前年比で27%減、額にして5兆4000億円で大幅減からの回復はみられていない。
遊技産業各団体の連携組織であるパチンコ・パチスロ産業21世紀会の「遊技産業レポート2023」によると、市場規模の縮小傾向は、パチンコ参加人口の減少が主な要因であるほか、1円パチンコ、5円パチスロといった貸玉・貸メダルの単価を引き下げたことによる遊技機1台あたりの売り上げ減を背景として挙げている。
コロナ禍の20年に全国各地で休業要請が出るなどした影響は大きく、企業信用調査会社の帝国データバンクの調査によると、19年に75%が黒字経営だったパチンコホール法人が、21年には約6割が赤字になり、急速に経営状況が悪化している。22年になって5割強が黒字とやや持ち直したが、赤字法人の多くが廃業に追い込まれたことで割合が改善している可能性がある。実際、22年のパチンコホールの倒産件数は34件で前年の16件から倍増している。パチンコホール法人数は19年の2000社から、22年には492社減の1508社と、コロナ禍の3年間で4社に1社が消滅した。

コロナ禍前に回復

 パチンコホールチェーン最大手のマルハンでも、全カンパニーで14年3月期の売上高2兆1116億円から21年3月期には同1兆1055億円まで減少し、8年連続で下がり続けた。一方で、コロナ禍のピークが過ぎた22年3月期には1兆2709億円、23年3月期には1兆3196億円と回復基調にある。
東京など主に関東地区を営業エリアとして運営しているマルハン東日本カンパニーの宮垣道輝執行役員は「各都道府県でコロナ対策のための休業要請があり、東京都内の店舗でも20年4月11日から5月6日まで応じた。その時期を底に、夏ごろから回復し始めた。今では売り上げ、客数ともにコロナ禍前に戻っている」と、どん底からのV字回復を果たしている。急速に客足が戻った背景を「もともと業界全体でハイレベルの換気対策をとっていた。また人と対面しないので、感染する可能性が低く安心して遊べることが広く知られるようになった」点を挙げる。

M&Aで積極出店

 コロナ明けを見据えての施策も打ってきた。店舗の改装のほか、22年冬からスマートスロット(スマスロ)、23年春からはスマートパチンコ(スマパチ)といった次世代機を導入。客がメダルや玉を直接触らずに遊戯でき、データセンターで管理するので、出玉を正確に把握できる利点がある。
またコロナ禍で経営にダメージを受けた中小パチンコホールをM&A(企業の合併・買収)によって取得することで、積極的な出店攻勢をかけている。実際に、4月以降だけで新たに4店舗が加わった。「業界全体が厳しい状況だが経営破綻してしまうと、伝統的な庶民の娯楽の場がなくなってしまうとともに、雇用を喪失させるわけにはいかない」と企業としての社会的使命にも言及する。経済産業省がまとめたパチンコホールの従業員数は市場規模の縮小とともに減少しているものの、21年時点で約16万人となっている。
市場は縮小しているが「これだけ人口が減り、趣味が多様化するなかで下げ止まったことは大きい。今後は、維持か増加させていきたい」と意気込んでいる。そのために「日本の庶民の伝統的な娯楽であるパチンコ・パチスロを今の時代に合わせて普及させたい」という。

次世代につなげる

 遊戯業界団体は連携してコロナ後を見据えた「KIBUN PACHI―PACHI委員会」を4月に立ち上げ、新たなファン獲得へ乗り出した。俳優の柴咲コウさんを広告モデルに起用し、テレビコマーシャルを制作したほか、ポスターやデジタル広告によってパチンコの楽しさをアピールしている。4月と5月に東京・上野で最新機種の試打イベントを開いたほか、東京・台場の「お台場冒険王2023」に27日まで、スマパチ・スマスロの次世代機を体験できるブースを出展している。
宮垣執行役員は「当社だけでなく、業界一丸となってパチンコ産業を盛り立てていきたい」と次世代への浸透を図る。

 


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