K-POP20年の歩み

コンテンツの進化でファン拡大
日付: 2023年08月15日 05時00分

 世界的にK-POPが台頭したこの20年間を振り返り、未来はどうなるかを考察する。今回は、崔貞児・国際武道大学韓国語講師(著書『韓流で読む韓国文化』)、李咏勲・韓国コンテンツ振興院日本ビジネスセンター長に話をうかがった。

 2003年、NHKがBSで放送したドラマ『冬のソナタ』の大ヒットから始まった日本での韓流人気は、沸騰したやかんの湯のように、崔講師は捉えているという。韓国のアイドルグループが徐々に日本でヒットするようになった、1990年代からの社会的背景があるからだ。
李センター長も同様の立場だが、98年に当時の金大中大統領と小渕恵三首相によって交わされた共同宣言「21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ」の意義を強調する。97年から同年にかけてはアジア通貨危機のあおりをうけ、国際通貨基金(IMF)の救済策に従ったため、新たな市場へ乗り出す必要に迫られていた。20年間の展開も、その時々の社会的な要因を出発点としていることを見逃してはならないという。

■1世代は中華圏と日本

今日のKPOP隆盛の源流に近いのは、91年に結成され人気となった男性グループ「ソテジワアイドゥル」の登場だ。
1世代アイドルと呼ばれるグループ活動の傍らで、「H・O・T」と「ジェクスキス」、「S・E・S」と「ピンクル」のファンたちが、それぞれ競合していた。いわゆる「ファンダム文化」がこの時期に形成されていた点は注目される。
崔講師によると、1世代アイドルは中華圏でコンサート中心の活動をしていた。90年代後半の当時、人気はあったが収益に直結しないという感覚を業界関係者は抱いたという。日本のファン層は、CDほか関連商品を好きな人であれば購入するという傾向の違いがあり、K-POPアイドルの日本進出が相次いだ。
『冬のソナタ』の大ヒットで日本の韓流が沸騰期を迎える前年には、韓日共催のサッカー・ワールドカップが開催された。政治的な親善ムードもあり2000年代中盤以降の「BOA」や「東方神起」など1・5世代アイドルは日本人にとって馴染みが深い。日本での活躍が当初から期待され、所属事務所による訓練を経てきた彼らは「完成型」アイドルとしてデビューし、根強い人気を得た。

■2世代はアジアを席巻

日本では「少女時代」や「カラ」の印象が強い00年代後半の2世代アイドルたちは台湾・香港・東南アジアを含めたアジア向けの活動を展開した。「一度聴いたら耳に残る印象的な楽曲やダンス」と崔講師は語る。
当時、MP3プレーヤーと音楽配信サイト「ソリパダ」の影響によってCDの販売は激減した。CDを購入するファンのいるアイドル音楽を中心として業界は再編された。一方バラード歌手はドラマのオリジナルサウンドトラック(OST)に参加していくことによってアジアへの進出を果たすことができた。ミュージックビデオ(MV)作成にかける業界の熱量は今日にまで及んでいるという。
李センター長は00年代に韓国のコンテンツ産業が成功した背景に、国と民間がそれぞれの役割を果たしたことがあるとみている。金大中元大統領が「(国は)支援をしても、(内容に)干渉してはいけない」と考えていた指針に基づき、国がより支援の対象とするのは大手ではなく中小の芸能事務所だという。業界を牽引する大手事務所と、支援を得ながら活動する中小事務所が、同じくハイクオリティーを求めて競争しながら作品を手がけていく土壌が当時すでにあった点を強調している。
なお、12年には当時の李明博大統領が独島(竹島)に上陸し、日本との関係が悪化する。16年には韓国がTHAAD配備を発表したのを受け、中国で「限韓令」が敷かれる事態が起きる。大きな市場であった両国で、韓流に対する警戒心が同様に現れたことで、海外進出の方向は変わっていかざるを得ない状況だった。

■3世代は世界に向けて

10年代は「ニューメディア」と呼ばれる、インターネットを利用した多くのコンテンツが発展し、世界規模で同時進行の様相となった。
YouTubeでヒットしたPSY(サイ)の「江南スタイル」は当初からグローバル市場向けの戦略が採られていたわけではなく、突然ビルボードに上ったという。
音楽業界の関係者がCD販売の収益を見込んでいない状況が久しかった韓国では、YouTubeを無料の宣伝機能として柔軟に受け入れ、CDはファンが購入する写真集や抽選券に代わるものとして位置するようになった。
当時、政治的要因で関係の悪い時期があった日本でさえも例外ではなく、K-POP人気を支える世界的な地盤は強固であったといえる。

 

韓国コンテンツ振興院日本ビジネスセンターに併設された「韓流エンタメショールーム」の『冬のソナタ』特設ブース。同作品は韓流コンテンツの世界進出のためのバイブルのような存在になったと、李咏勲センター長は話した

「韓流エンタメショールーム」ではK-POP20年史の展開を一望できる


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