ゼロゼロ融資返済で倒産3割増

同胞企業は健闘
日付: 2023年07月25日 12時29分

 日本全国で企業倒産件数が増加している中、同胞企業が健闘している。企業信用調査会社がまとめた今年上半期の全国倒産件数は前年比で3割増加した。新型コロナ対策として企業の資金繰りを支援した無担保・無利子のゼロゼロ融資の返済が始まった影響とみられる。その一方、在日韓国系金融機関各社は好決算となっており、「全体的には好調だが、原材料高による経費負担増もあり、先行きは見通せない」として気を引き締めている。

 

 東京商工リサーチの今年上半期(1~6月)の全国企業倒産は前年比32%増の4042件となり、5年ぶりの高水準となった。
新型コロナ対策として導入されたゼロゼロ融資は、売上げが減った中小企業などを対象として、実質無利子・無担保で金融機関が資金提供をする制度。2020年に政府系金融機関で始まり、同年5月には民間金融機関にも拡大された。
ゼロゼロ融資を利用した企業倒産は322件となり、前年比で1・8倍に上る。22年下半期(7~12月、279件)と比べ、43件(15・4%増)増加し、上下半期を含めた半期ごとの件数では最多を記録した。
同社では「コロナ禍の出口を見据え、経済活動が本格化しているが、原材料高によるコストアップが企業に重くのしかかっている。業績改善が遅れていながら返済が始まった企業は、収益悪化から倒産が出始めている」と厳しい現状を分析している。
一方で、在日韓国系金融機関が加盟する在日韓国人信用組合協会(韓信協)では、同胞企業の状況について「事業規模や業種によってばらつきはあるが、総じて好調に推移している」との見解を示している。
加盟信組のあすか信用組合は22年度の決算で、コア業務純益36億円、経常利益32億3000万円、当期純利益21億9000万円で過去最高益を更新。横浜幸銀信用組合のほか、信用組合愛知商銀、信用組合広島商銀といった他の信組も、それぞれ好決算を達成している。
韓信協では「コロナ禍で大変だったが、国の財源を裏付けにしているゼロゼロ融資導入で、貸出が右肩上がりになった」と要因を分析する。
好調の背景については、「業種や職種などの特徴がつかみにくい」としつつも、「強いて言えば不動産業は安定している」と語る。ほかに特徴的な点としては、「企業利益が大企業に偏在して、中小企業にとっては厳しい」と事業規模による違いが大きいようだ。
個別事業では「例えば宿泊業のなかでも、レジャーホテルについては都心部はいいが、郊外は振るわない」と同じ業界でも、立地条件などに左右されることがある。
ゼロゼロ融資の返済は今月以降に本格化するが、韓信協では「対象となった中小企業は、融資によって延命している『ゾンビ企業』もあるだろう。返済が本格化することによって、倒産など淘汰も含めた正常化に向かうかもしれない。中小にとっては厳しいだろうが緊張感を持ち、経営に取り組む必要がある」と、これから迎える不透明な先行きを注視している。

 

 


閉じる