『よそのくに』三浦小太郎 編著

戯曲「よそのくに」(野村勇)全文掲載
日付: 2023年07月11日 13時00分

 『よそのくに』は、北韓に拉致された田中実さんと金田龍光さんの知られざる事実を、リアリティを伴う脚色によって周知しようとする野村勇氏による舞台脚本(昨年11月に都内で上演)。
先月30日、三浦小太郎氏の同題編著がオンデマンド版で刊行された。原作の脚本が全文掲載されているほか、特定失踪者問題調査会の荒木和博・岡田和典両氏による論考、特定失踪者と拉致被害者の家族に当たる竹下珠路・増元照明両氏と三浦氏も交えた座談会が収められている。
三浦氏は実際に観劇し、「こういうものを作っているという認識がなかったことを、恥ずかしく思った」と感想を持ったという。北韓人権問題の専門家でさえそのような感慨をもつ上演内容は、拉致問題の深刻さを切実に訴える。
表題となっている童謡「海」の一節は、北韓による拉致問題を念頭に置くとき強いメッセージ性を帯びるようになる。田中さん・金田さんが日本をむしろ「よそのくに」と考えるに至ってしまったという事実だけ、前提にあるのだ。
本書は、救出の手を差し伸べられなかった全ての人に焦燥の念を駆り立てる内容を含んでいる。


閉じる