タクシーで子育て支援

韓日の取り組みと課題
日付: 2023年06月13日 12時08分

 韓国で5月から導入が始まった「ソウルママ・パパタクシー」は、乳幼児を養育する家庭の負担軽減を目的としたソウル市のモデル事業だ。日本でも同様の取り組みに第一交通産業グループの「ママサポートタクシー」があり、今年で企画スタートから10年が経つ。両者のサービス内容と趣旨を比較・検証する。


■韓国は外出をサポート

先月24日、ソウル特別市内の16区で「ソウルママ・パパタクシー」事業が開始された。24カ月以下の乳幼児を養育する家庭の外出をサポートすることが目的だ。車内にはチャイルドシートが設置され、空気清浄機や飛沫防止シートなども用意されている。 
利用にあたって、乳幼児の養育者は「ソウルママ・パパタクシー」の運営会社「i・M」のタクシーモバイルアプリから利用者登録を行い(1カ月以内に発行された住民登録謄本が必要)、ソウル市の該当区から確認が取れると、乳幼児一人につき10万ウォン相当の利用チケット(電子マネー方式)が支給される。現在は導入開始から間もなく、対象エリアは限られており、利用チケットの有効期限も今年12月17日まで。今年のテスト事業を踏まえ、2024年には全自治区に拡大する見通しだ。

■日本は出産をサポート

日本では、13年8月から福岡県北九州市でサービスを開始した「ママサポートタクシー」という事業があり、第一交通産業グループが日本全国で展開している(現状32都道府県、73の営業エリア)。「ママサポートタクシー」は、子どもが産まれるまでの利用に重点が置かれたサービスだ。助産師の研修を受けたドライバーが24時間体制で出産を控えた妊婦に対応できるよう準備している。迎え先(自宅や実家)と送り先(産婦人科など)の住所を登録し、実際に配車を受けた際には、乗務員がスムーズに目的地へ向かえるようになっている。利用料金は通常のタクシー料金と同じで、サービス自体への追加料金は設定されていない。
サービス開始のきっかけとなったのは、タクシー内のアンケートで「妊娠中にタクシーを使いたいけれど、車内を汚したらどうしようと気を使ってしまう。乗る勇気がない」という声があったため。
第一交通産業グループ交通事業部営業推進課・佐々木綾子主任は「子育てをしているお母さんを応援したいという思いから始まった取り組み」と話した。

■子育てへの配慮が必要

「ソウルママ・パパタクシー」が子どもを連れての外出支援に特化しているのに対し、「ママサポートタクシー」は産前のサービスにも及ぶ。サービスを受けるため事前の登録を済ませておく必要があるという点は同じだが、「ソウルママ・パパタクシー」は行政から乗車料金を支援してもらうため、「ママサポートタクシー」は出産に臨む安心感を得るためと目的が異なっている。10年間のサービス展開で日本全国には46万人を超える登録者がいるという。登録だけ済ませておき、実際に利用がなければ料金は発生しない。
両者の共通点として、乳幼児を連れての移動手段としての利用を挙げているのは、電車やバスをはじめとする公共交通機関での移動に際し、まだ配慮が行き届いていない社会的課題を露呈しているようだ。韓国と日本は、少子化が深刻な問題となっている点で共通する面が多い。
子どもを取り巻く環境に即した韓日タクシー業界でのサービス提供に、多くのことを学ぶ必要があろう。

ソウル特別市作成の「ソウルママ・パパタクシー」のポスター

「ママサポートタクシー」の利用風景
(提供=第一交通産業グループ)


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