韓国全土に「自統」スパイ網

民間の仮面かぶり68団体活動
日付: 2023年06月13日 11時08分

 韓国の体制転覆を目論む昌原スパイ団組織が、少なくとも68団体に上ることがわかり、韓国社会で波紋を呼んでいる。民間組織「自由民主研究院」が分析した資料によると、全国規模の地下スパイ団「自主統一民衆前衛(自統)」の地域別の下部ネットワークと「下部組織」が全国に68カ所存在する。

(ソウル=李民晧)

 

 自統は、民主労総と進歩党など他の社会団体にも組織員を潜入させており、組織の実際の規模はこれを上回ることが想定される。
自由民主研究院と国家大改造ネットワークは7日、ソウル鍾路区のソウルグローバルセンターでセミナーを開催し、上記の分析結果を公表した。セミナーで「近年における北韓スパイ団事件の評価と対策」をテーマに発表した自由民主研究院のユ・ドンヨル院長は、「2021~22年にかけて北韓に報告された対北報告文と北韓からの指令文(21年3月8日、22年6月16日に指令を受け取り、6月21日に対北報告文を提出)を分析した結果、地域別の下部ネットワークと下部組織が68カ所に上ることがわかった」と発表した。
自統は徹底的に「民間組織」の仮面をかぶっていた。上部組織は「理事会」、総責任者は「理事長」、メンバーは「役員」、下部組織は「子会社」と呼んだ。組織数が最も多い地域は嶺南地域で、巨済・統営・高城・晋州・梁山等の慶南地域18カ所と、栄州・醴泉・奉化等の慶北地域7カ所を合わせて25カ所に達した。続いて大田・保寧・瑞山・唐津等の忠清地域が16カ所だった。さらに江原地域9カ所、湖南地域8カ所、仁川・京畿地域4カ所、済州が1カ所だった。ソウルの場合は松坡・東大門・江東・江南・恩平等、五つの区で組織を稼働させていた。

本人が気づいていない可能性も

ユ・ドンヨル院長は「これらの数字は、昌原スパイ団の起訴状に記載されている対北報告文と指令文を分析したもの。組織の位置を地図上に示せば、『韓国が赤く染まる』」と説明した。下部メンバーは、自身の活動が北韓とつながっていることを知らなかった可能性もある。ユ院長は「自統などの地下組織は、単線連係複線布置の運営規則を順守している」と指摘する。こうした組織では上下関係にあるメンバー間でのみ個別に接触し、上位メンバーは下位メンバーを複数人抱えているが、下位メンバー同士は互いの存在がわからないように情報が遮断されている。
この日の討論で、国家情報院の元要員ユン・ボンハン氏は「済州、昌原、晋州、全州、ソウルで最近検挙された一連のスパイ団事件は、北韓関連組織が全国単位で活動しているという事実を立証するものだ。特に、これらの組織が合法的活動の拠点として、地域の進歩党組織などの政党を利用し組織の構築を試みたという事実を鑑みても、今回摘発されたスパイ組織は氷山の一角にすぎない」と述べた。ユン氏はまた全国会議、民主労総など、すでに社会に浸透している団体の他、政治・社会・宗教などの各界で組織的なスパイ勢力が活動中であると主張した。

前政権下ではスパイ活動を黙認

上記の内容を受け、過去の脱北者のうち最高位級の人物であり、対南情報を管掌した黄長燁・元北韓労働党書記の発言が改めて注目されている。黄長燁氏は「韓国内の北韓スパイは5万人に達する」と主張している。元・北韓工作員のキム・ドンシク氏は、一般的な工作員よりも位の高い「先生(リーダー)」級の固定スパイ組織は20前後存在し、60~100人余りの「先生(リーダー)」が活動していると推測した。
良い教訓としてはドイツの例が挙げられる。西ドイツによって統一された当時、旧西ドイツで活動していた旧東ドイツのスパイは少なくとも2万人以上であることが判明した。
スパイの活動範囲は長官や国会議員、首相補佐官、政党幹部などの高位級をはじめ、政財界、大学、宗教、メディアなど幅広い分野にわたっており、彼らの協力者まで含めると10万人を上回るものと見られていた。
文在寅政権当時の韓国公安は、ソウルの中心で北韓を称えるスローガンを叫んでも逮捕しなかった。従北行為を事実上黙認・幇助するものだ。政権交代後、スパイは逮捕の対象へと一変した。最近のスパイ団事件も、文政権時代に中断されていた内偵を再捜査した結果、その全貌が明らかになったものだ。
昨年死亡した金東吉延世大学名誉教授は「スパイを逮捕しない国は、座して死すことを容認する国ということだ」と語った。”スパイを野放しにしていては韓国が消失する”という警告だ。

韓国の地図に描かれたスパイ団分布図(自由民主研究院提供)


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