東京測地系→世界測地系 韓国の影響力拡大

国力増強に伴う国際化の推進
日付: 2023年06月06日 12時28分

 韓国の国際社会に向ける意識と視点、その戦略と展開力は素晴らしいと考えている。この点をある韓国人経営者に伝えると、彼は、「日本人は何かにつけて日本一を口にする。様々な意味で国内規模が一定程度あるから、まずは日本国内で一番になることを目指すのであろう。韓国人は普通、韓国一を目指すとは言わない。常に世界を見つめていかないと、国内だけでは生き残れないからである。こうした意識が韓国人の国際化への原動力の一つとなっている」と答えた。
先般開催されたG7広島サミットにオブザーバー参加した韓国は国際社会の中で、そのプレゼンスを高めたことは間違いない。
ところで、韓国がこうした積極外交を展開できる背景にはやはり、韓国自身の国力増加に伴う、影響力拡大という基盤があるからであると筆者は認識している。そうしたポイントのいくつかの事例を挙げてみたい。
[原発ビジネス] 原子力発電所の輸出ビジネスは、外貨獲得の視点からは有効なビジネスであり、韓国は産官学・金融が連携しながら原発輸出に注力している。こうした中、UAE(アラブ首長国連邦)バラカ原発プロジェクトは、韓国原発の経済性を全世界に立証したことに大きな意味があると見られている。国際機関であるOECD(経済協力開発機構)NEA(Nuclear Energy Agency・原子力庁)のマックウッド事務総長は、「多くの専門家が経済性などを理由に新規原発建設に懐疑的であったとき、韓国はきちんとしたサプライチェーン、検証されたモデル、熟練した人材があれば、原発建設も適宜に予算範囲内できちんと建設できることを示した」と高い評価のコメントをしている。
韓国は2009年、UAE原発輸出契約を獲得してから12年経った21年のバラカ1号機商業運転開始を皮切りに、来年は4号機まで順番に稼働に入るとしている。
[自動車産業] 韓国の自動車業界は電気自動車(EV)化への対応を粛々と進めている。現代自動車グループと車載電池大手のLGエナジーソリューションは、それぞれ取締役会を開いて北米で電気自動車用車載電池を供給するための合弁会社の設立を議決したと発表している。現代自動車グループが韓国の車載電池メーカーと北米に合弁会社を設立するのはSKオンに続いて2例目で、「バッテリー同盟」によって電池関連の自国生産を優遇する米国政府のインフレ抑制法に積極的に対応する計画とも見られている。
現代自動車グループはサッカーワールドカップ(W杯)の26年大会と30年大会の公式スポンサーを務めることとなった。公式スポンサーの中で最上位ランクの「FIFAパートナー」を維持し、8年間にわたりFIFAが主催する全大会のモビリティー部門の公式スポンサーを務める権限を確保したのである。スポンサーシップの範囲は大会公式車両の提供など自動車に留まらず、自動運転、ロボティクス、都市航空交通システム(UAM)などモビリティーの領域全般に拡大している。
[宇宙開発] 韓国は欧米や日本と同様、制宙権を意識した宇宙開発に入っている国である。こうした中、韓国が独自開発した初の国産ロケット「ヌリ」が5月23日、南部の全羅南道・高興の羅老宇宙センターで組み立て棟から発射台に運ばれた。3回目となる打ち上げでヌリは実用レベルの衛星を初めて搭載し、24日午後の当初予定日は打ち上げ延期となったが、その後打ち上げられた。
科学技術情報通信部と韓国航空宇宙研究院によると、1段目の分離に成功し、高度65キロを突破し、主な衛星を周回軌道に乗せることに成功したと発表している。打ち上げには国内の民間企業も参加しており、韓国政府はこれを機に航空宇宙産業を発展させたい考えである。
韓国の技術力は着実に向上している模様である。上述したような点に見られる、「韓国自身の国力拡大が韓国の国際化を更に推進させる原動力になっている」と見ておきたい。
(愛知淑徳大学ビジネス学部ビジネス研究科教授 真田幸光)


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