著者探訪 青い夜空に引き込まれる絵本

『星をつるよる』著者 キム・サングンさん
日付: 2023年05月30日 12時44分

 青を基調とした美しい、幻想的な絵本が今年4月にパイ・インターナショナルから刊行された。印象的な夜空の青の美しさは、「サングンブルー」と呼ばれている。
著者(文と絵)のキム・サングンさんはもともとアニメやゲームを制作する仕事に携わっていた。米国のスタジオで働いていたときに、「絵のタッチが絵本に向いているので、目指してみてはどうか」と声を掛けてくれたスタッフがいた。出発は「一枚の絵を綺麗に描きたい」という思いからだった。
眠れない子どもが月で暮らす一匹のうさぎに釣り上げられ、同じく眠れない仲間たちを集めていく―。物語はここから始まるが、初期構想では「眠れない」という箇所が「今にも息絶えそうな」という設定であった。当初は「死」をテーマにしていたが、編集者のアドバイスを受け、イメージが重なる「眠り」を主題に変更した。「人は死んだら星になる」と韓国では考えられているという。作品中の、発光するように彩られた星々は、丁寧に描かれている。人も一人一人顔が違うように、星も一つ一つ形が違うように描いた。この絵本を描き始めたきっかけは、言葉にしなくても相手のことを理解しようとする大切な気持ちを表現したいと思ったことから。世界中の人が思う存分遊び、ぐっすり眠れることを願っているという。
2014年にボローニャに自作の絵本を持ち込み、ドイツの出版社からオファーを受けて絵本作家としてデビューしたというキムさん。もともとチャレンジすることが好きだったと話す、行動力にあふれた著者の今後の活躍に、ますます期待がかかる。

 

キム・サングン(文・絵)=写真右
韓国ソウル在住。『もぐらくんのなやみ』(未邦訳)が2014年ボローニャ国際児童図書展で紹介され注目を集める。
すんみ(翻訳)韓国釜山生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。訳書に『5番レーン』(鈴木出版)、『屋上で会いましょう』(亜紀書房)などがある(インタビュー時には通訳を担当)。


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