尹大統領 岸田首相 韓国人慰霊碑に献花

在日社会は歓迎「大変うれしく感動」
日付: 2023年05月23日 10時34分

 広島市で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)が21日、閉幕した。最終日には、拡大会合に出席するため来日した尹錫悦大統領と岸田文雄首相がともに広島市の平和記念公園内にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑に献花した。韓国歴代大統領として初の広島訪問に、両国関係改善に弾みがつくきっかけになると、在日韓国人社会では歓迎の声が上がっている。

 

 G7広島サミットが開幕した19日、尹大統領は広島市内で韓国人被爆者ら約20人と面会した。尹大統領は「大統領として訪問が遅くなり申し訳ない。悲しみと苦しみを味わった現場で、故国が手を差し伸べられなかったことを心からおわびする」と慰労した。
自ら被爆し、韓国人原爆犠牲者慰霊碑の広島平和記念公園内への移設運動で中心的な役割を果たした民団広島地方本部の権養伯顧問は「あの世に行ったら、原爆で死んだ先輩に『祖国の大統領が来てくれました』と報告したい」と声を弾ませた。

 民団広島地方本部の李英俊前団長は「大変うれしく感動している。こういう日が来るとは思わなかった」と最大限の喜びで心中を表現した。民団広島では韓国大統領の訪問を、歴代の駐日大使に要望してきた。日本の首相としても、1999年に当時の小渕恵三首相が訪ねて以来となる。
李前団長は韓日の両トップそろっての訪問について「韓国人被爆者がいたという事実は、韓国でも日本でもあまり多くの人に知られていない。これを機に韓日両国だけでなく、世界の人に知られる機会になるだろう」と意義を強調した。
尹大統領が韓国国内で「日本は謝る必要はない」と繰り返し発言していることに関しては「韓国世論はどう捉えているか分からないが」と断ったうえで、「日本を厳しく糾弾するだけでは、両国関係はよくならない。相互理解を進める尹大統領の判断は正しく支持する」と同感している。
岸田首相が7日の韓日首脳会談で元徴用工被害者に対し発した「悲しい思いをされたことに心が痛む思いだ」との発言については「韓国国内、在日韓国人の一部では、不十分だという声もあるが、前向きに捉え相互理解につなげていかなければならない」と理解を示している。
民団広島地方本部原爆被害者対策特別委員会の権俊五委員長も「長い間ずっと切望していたことで、願いがかないとてもうれしい」と歓迎し、「核のない世界に向けての一里塚になってほしい」との願いを吐露している。韓国内で核武装論が台頭しつつあることについては「被爆地の実態を見たうえで原爆の恐ろしさを実感し、在日韓国人や被爆者が差別によって辛酸をなめた実態を次世代に伝えることで、核抑止につなげてもらいたい」と切望している。
一方で尹大統領の一連の発言に関しては「大統領が未来志向の姿勢なのに、在日韓国人である私の個人的発言がきっかけで、雰囲気を壊すわけにはいかない」と「ノーコメント」を貫いている。
韓国人原爆犠牲者慰霊碑は、約2万人とされる広島の朝鮮人被爆者の慰霊のため、1970年に民団広島地方本部が中心になって建てられた。当初は被爆し、亡くなった李王家のイ・ウ殿下が瀕死の状態で見つかった場所に近い本川橋西詰めに建立された。のちに平和記念公園内への移転を求める声が高まり、99年に現在地に移設されている。


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