韓日首脳会談、記者会見質疑応答  <全文>

広島韓国人慰霊碑を共同参拝へ
日付: 2023年05月08日 07時20分

 尹錫悦大統領と岸田文雄首相が広島韓国人慰霊碑を一緒に参拝する。19~21日に広島で開かれる主要7カ国(G7)首脳会議に合わせて行われる。尹大統領と岸田首相は7日、ソウル龍山大統領府で開かれた記者会見でこのように明らかにした。韓日首脳が広島平和公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑を一緒に参拝するのは史上初めてだ。会見で岸田首相は日本を代表して過去の歴史について遺憾の意を表明し、「韓国側と協力していくことが日本の首相としての私の責務だ」と述べた。

(ソウル=李民晧)

●日韓記者会見の質疑応答(全文)は次の通り。
 
韓国側記者:韓日首脳会談、韓日首脳間のシャトル外交の復元が12年ぶりに実現した。尹大統領はどのような意味があると考え、今後の日韓関係がどのような方向に進むべきだと考えるのかを知りたい。また、先月、米韓首脳は北朝鮮の核の脅威に備えたワシントン宣言を採択し、これによって核協議グループ(NCG)の創設に合意した。このような韓米間の核拡大抑止の議論に日本が参加する議論があったのか、あった場合、韓米日共同対応のためにどのような部分で協力が可能なのか伺いたい。最後に、韓国内では福島汚染水の放流に関する懸念が続いているのが事実だ。今日の発表でこのような懸念を払拭することができるとお考えか。
岸田総理にも質問させていただくが、総理は、日韓関係改善のための尹錫悦大統領の決意を高く評価され、早期訪問を決断されたと聞いている。韓国内では、日帝強制動員の解決に関連して、韓国側の措置に見合った日本の誠意ある対応に対する期待がかなり高かったのも事実だ。今日の首相の(過去史)発言は、強制動員被害者に対する発言と受け止めていいのだろうか。 そして、このような発言を決意されたきっかけをお聞きしたいと思う。
もう一つ、福島産の水産物の安全性に対する韓国内の懸念が依然としてある。今日の日韓首脳会談の議題としては議論されなかったと聞いている。水産物の安全性担保方案について韓国と議論する計画があるか伺いたい。
 
尹大統領:韓日間でシャトル外交が12年ぶりに行われ、両国の関係改善が軌道に乗り始めた。 私は、韓国と日本が自由、人権、民主主義、法治、このような普遍的な価値を共有する国であるため、両国が協力し、両国の共同の利益、また、国際社会の平和と繁栄のため共にリーダーシップを発揮することが重要だと思う。 そして、両国は北韓の核の脅威に共にさらされている。これまで以上に安全保障協力が重要な状況だ。ワシントン宣言は一先ず、韓国と米国の二国間をベースで合意された内容だ。 しかし、日本の参加を排除するものではない。 一先ず、私たちの立場としては、韓米間でワシントン宣言が完成したわけではなく、引き続き議論をし、共同企画、共同実行をしていく過程でその内容を詰めていかなければならない立場だ。まずこれが軌道に乗れば、また日本も米国との関係で準備が整えば、これはいつでも一緒に協力できる問題だと思う。そして、今日の会議、首脳会談でも、岸田総理が、福島原発の汚染水に関しては、隣国である韓国の国民の健康と安全に対する懸念を払拭すると、それを解消するために努力するという約束をされた。そのような観点から、専門家による現地視察について合意がなされたということだ。
 
岸田総理:「日韓関係の強化が必要だ」という思いは、私も尹大統領と同じように実感している。 そのような思いを持っていたからこそ、今回の早期訪韓を決断することになった。最初の質問の趣旨は、韓国政府に比べて日本側の両国関係改善の動きが遅い、鈍いのではないかということだったと思う。 昨年3月に私と尹大統領が示した方向性によって、2カ月足らずの間に、両国間の対話と協力が,ここ数年の低迷期を脱し、経済安全保障を含む様々な分野で動いており、具体的な成果を上げていることに目を向けていただきたい。そのうちのいくつかはすべて発言でも紹介したが、そこに日本側の意欲が表れている。今後も両国政府が各レベルで、民間の協力を支援し、両国が共にプラスになる利益を得られるような協力を進め、さらに具体的な成果を出していきたいと思う。そして、歴史認識については、1998年10月に発表された日韓共同宣言を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全面的に継承している。 そして、政府のこの立場は今後も揺るがないということを申し上げた。
そして、それを前提にした質問は、先ほど申し上げた、当時の過酷な環境の中で多くの方々が非常に大変な、そして悲しい経験をされたことを思うと心が痛むという言葉についての質問だった。 この言葉は、当時大変な経験をされた方々に対して、私自身の心情を率直に申し上げたものだ。日本を取り巻く戦略環境、これは両国の協力が不可欠になっている。私としては、困難な時代を乗り越えてきた先人たちの努力を受け継ぎ、まさに未来のために、尹大統領をはじめとする韓国側と協力して、両国民の利益になるような協力関係を構築していきたいと思う。そして最後の質問、ALPS処理水に関する対応、これで十分なのかという質問。先ほど申し上げたように、韓国国内の皆さんの不安な気持ちに応えるためにも、韓国の専門家、現地視察団の派遣を私どもが受け入れることが重要であると考える。 そこで、尹大統領と意見が一致した。 日本のこのような方針については、IAEAの科学的な見地にもきちんと反映させながら説明する努力を続けていく。そして、6月中にIAEAの最終報告書がまとまる予定だ。この報告書もしっかり反映させて、私どもは国内的な手続きを進めていきたいと思っている。 そして、その際もぜひ韓国側とはコミュニケーションをとりながら、このような動きを続けていくつもりだ このような努力を重ねていくことで、韓国の多くの方の懸念、不安感にも対応していくことができると思う。以上です。
 
日本側記者:岸田総理に質問する。歴史認識を含む元徴用工問題、そしてレーダー照射問題をはじめとする両国間の、両国間の懸案について、今日の会談で岸田総理からどのような立場を伝えられ、尹大統領からどのような反応があったのか。そして、福島第1原発の処理水の放出問題、福島産の水産物の輸入に関して一定の進展があったのか。先日、米国と韓国の首脳が核協議グループの創設に合意したが、これは日韓、そして日米の枠組みに影響を与えるのだろうか。
続いて尹大統領に質問する。元徴用工問題への対応について、韓国国内ではまだ反対の声がある。日本では、大統領の方針が変わるのではないかという見方もある。大統領の方針は今後も堅持されると考えてよろしいか。そして、日本側への対応を求めているが、今回の会談でどのような話をされたのか、そして今後どのようなことを要求されるのか。
 
岸田総理:まず今の質問については、質問にあった事項の中で、会見のすべてで私が申し上げた内容と重複する部分がある。 その部分については改めて申し上げない。 それを前提として、今回の会談では、尹大統領と3月の訪日などを通じて深まった信頼関係をベースにして、幅広い分野について胸襟を開いて意見交換をした。 3月の会談の後、経済・安全保障分野の様々な対話、そして協力が非常にダイナミックに進んでいることを共に歓迎した。そして、双方の関心事項、懸案事項についてお互いの立場に立脚した議論を行った。詳細は外交上の問題なので、ここでは割愛する。北韓情勢をはじめとするこの地域の安全保障環境が一層厳しくなる中で、日米同盟、韓米同盟、そして日韓米の安全保障協力を通じて抑止力と対処力を強化することの重要性については、尹大統領と認識が一致した。そして、質問の核協議体の創設についてだが、ご指摘の核協議体の創設を含め、米国と韓国の間で拡大抑止強化に関する議論が行われていること、そして拡大抑止協議、2+2を含む日米間の拡大抑止強化のための高官級協議を通じた日米間の拡大抑止強化の動きとともに、地域の平和と安定に貢献するものだと思う。 引き続き、日米、日韓、日韓米間で緊密な連携を図っていきたいと考えている。ありがとうございます。
 
尹大統領:まず、強制徴用解決法に対する政府の方針が変わるのかという質問については、変わらないと申し上げたいと思う。 私たちが発表した解決法は、65年の請求権協定とまた、2018年の裁判所の判決を同時に満たす妥協案として、法的完結性を持つ唯一の解決法だ。現在、15人の勝訴者のうち10人の方が解決金を受け取った状態だ。政府は、残りの方々に対しても原則に従って手続きを進め、十分なコミュニケーションを行いながら、解決策を忠実に履行したいと考える。マスコミで韓国側の要求を報道した記事をたくさん見たが、私は、このような過去史に対する認識の問題は、真摯に取り組むことが重要であり、どちらか一方が相手に要求できる問題ではないと思う。 私が今日も発言で申し上げたが、過去史が完全に整理されていないからといって、このような懸案事項と将来の協力のために一歩も踏み出してはいけないというような認識からは脱却しなければならない。今、韓国と日本は北東アジアの厳しい安全保障状況に直面しており、また、岸田総理と私たちはお互いの考えを共有している。重大な歴史的転換期に私たち(韓日)が共に置かれている。 そこで、価値を共有する韓日が協力して両国の共同の利益を追求し、国際社会で共通のリーダーシップを構築することが重要だと私は考えている。両国が今後、未来に向けた協力と交流を拡大していくと申し上げたい。

 

記者会見のもよう(写真=大統領室)


閉じる