高永喆 韓半島モニタリング 第4回

自ら首を絞める金正恩の危険な冒険
日付: 2023年04月18日 11時43分

 北韓が13日午前7時頃、東海上に中距離弾道ミサイル1発を発射、今年に入って15回、28発のミサイルを発射した。
昨年は、37回、73発のミサイルを連射しており、今年も昨年を上回る挑発を繰り返す見通しだ。
特に3月16日は、尹錫悦大統領が日本を訪れた当日、火星17型大陸間弾道ミサイルを移動式発射台(TEL)から発射した。ついに3月19日には短距離弾道ミサイル(SRBM)を発射した後、「東海上空800メートルで模擬核弾頭爆発に成功した」と主張した。北韓が「長崎型原爆」より強力な小型戦術核を完成した可能性を否定できない。核を空中爆発する時は強力な核電磁波、EMPを発生させ、すべての電子機器を機能停止させる。
北韓の相次ぐ武力挑発の背景は、日米韓の安保態勢に対する威嚇である。言わば「ガツクン」(両班帽子の紐)戦術と言って右紐は米国、左紐は日本だから一つの紐だけ切ってしまえば韓国は崩壊する、という金日成の教示である。従って、反日扇動と反米扇動は北韓体制を支える二本柱になっている。北韓は昨年9月8日に「核武力政策の法令」を採択し、核先制攻撃の方針まで公開して、各種ミサイル発射挑発を繰り返してきた。
北韓の核廃棄に一番手っ取り早い選択肢は米国が日本・韓国・台湾の核武装容認という外交カードを中国に提示し、中国に北韓の核開発を止めさせる道が一番効くと考える。中国が最も怖がる最悪のシナリオはこれら3国の核武装だろう。
過去、国際関係の先例を見極めると勢力均衡が崩れたら必ず地域紛争や戦争が発生した。
韓国戦争もウクライナ戦争も力の均衡が崩れて招いた戦争である。紛争や戦争発生を防ぐためには勢力均衡しかないということが分かる。
NPT条約10条には「核脅威に直面している国はNPT条約を脱退出来る」と記されている。
因みに韓国は北韓の露骨な核脅威に直面しているから核武装の名分がある訳だ。日本も尖閣諸島や北方領土領有権問題で、中国やロシアとの紛争に巻き込まれる恐れが常時潜在している。特に中国は2027年度まで台湾を武力統一すると公然と言っている。
結局、韓国・日本・台湾は核を持っていないから核保有国である中国・ロシア・北韓からの脅威に直面しており、常に武力脅威にさらされているのがわかる。
従って、東アジアの地域紛争と戦争勃発の危機を抑える近道は恐怖の均衡しかない、ということを自覚しないと危機は避けられない。どうせ、核兵器は使えない政治的な手段だから、恐怖の均衡こそ紛争と戦争勃発の危機を防止すると同時に地域平和を保つ近道であることが分かる。因みにバイデン米大統領は来年の選挙で再出馬を表明しており、落ち続ける支持率を上げるために前向きな政策転換が求められている。
そのために一番手っ取り早い選択肢が対北韓政策の舵取り転換である。そのカギとなるのはバイデン大統領が「ならず者」と名指しした金正恩斬首作戦の実行に踏み切る蓋然性が極めて高いと考えられる。民主党のオバマ大統領は11年、パキスタンに潜伏したテロ指導者オサマ・ビンラディン斬首作戦を実行した。
トランプ大統領は20年1月、大統領再選を目指して無人攻撃機でイラン軍司令官ソレイマンを排除した。斬首作戦用の無人攻撃機MQ9は4発のヘルファイアミサイルを含む14発のミサイルを搭載している。また、ミサイルの弾頭に六つの刃を装着した「忍者爆弾」は特定人物だけを狙ってピンポイント攻撃する。民主党のクリントン大統領は1994年、北の寧辺核施設空爆寸前までいった前例がある。同じ民主党のトルーマン大統領は1950年、韓国戦争が勃発するや即時参戦を決めた先例がある。
危険過ぎる冒険に走る金総書記は、米民主党政権のタカ派にやられる危険性を排除できない恐れを抱えている。

 


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