すべての生命体がそうであるように、国家は自分を破壊しようとする勢力から自らを守ってこそ生存し繁栄することができる。そのような努力を放棄する国は消滅する。
建国大統領が描いた共和制の国民国家に発展していた大韓民国が、共産側の工作で混乱に陥ったとき、国家を救うため立ち上がった朴正煕大統領は、一瞬でもこのことを忘れなかった。朴正煕大統領は、東西冷戦の最前線で軍事革命後、急速に推進してきた経済開発の成果と国力を組織化することに総力を傾けた。
平壌の金日成は、韓半島の赤化、つまり大韓民国の消滅が目標だ。そのため、平壌側としては、大韓民国が国力を組織化し、効率的に動員する「維新体制」が成功するのを許すわけにはいかなかった。平壌は、物理的に韓国のリーダーシップを除去するか、維新体制を破壊、弱化させることになった。
ところで、米国は朴正煕大統領が急ぐ「国力の組織化」を独裁として見た。人権を掲げて執権したカーター大統領は、冷戦の敵の共産権ではなく、同盟国に圧力を加えることを自分の政治的能力、任務だと考えた。
一方、東西冷戦でモスクワ側が西方世界を徹底に研究、開発した政治戦争、「影響力工作」の威力はすごかった。ソ連の「影響力工作」は、西側世界のメディアや知識人に特に集中した。「役に立つ愚か者」を動員、活用した。自分たちこそが道徳的、良心的だと考える知識人たちいわゆる「役に立つ馬鹿たち」は多かった。彼らを洗脳するのは難しくなかった。
平壌側は、李承晩、朴正煕大統領に対して物理的除去要するに暗殺を試みた。平壌側が試みた物理的除去は失敗し、大きな副作用だけを産んだ。大統領暗殺の試みは韓国に警戒心を与え、韓国を強力に団結させた。国際的制裁を呼び、平壌側は孤立した。
平壌側は、米国など西方世界がどのように韓国などに圧迫を加えるかを観察した。米国は、自国に負担となる、韓国大統領を物理的除去する方法ではなく、見えない方法で無力化、除去したと分かった。隠密に行われた米国の方法は副作用がないようだった。平壌側はこれを学んだ。平壌側はモスクワとワシントンの両方から教訓を得たのだ。
平壌側も「人権」と「民主化」を武器として使うことにした。自分たちの人権抹殺と全体主義独裁を最大限隠し、標的とした大韓民国が人権と民主化に問題があるとして、大々的に宣伝に乗り出した。今、平壌側はモスクワが西方世界に向けて展開する影響力工作に便乗すればよい。
金日成の朝鮮労働党と総力戦を展開する朴大統領としては、国内の少数の政治的反対勢力が主張する「人権」より、国家安全保障が当然もっと重要で、国民を貧困から脱出させなければならなかった。産油国が石油値を上げ、オイルショックが来たらそれに対応を迫られた。「先進諸国」が求める人権を優先する時間と余裕がなかった。安保と政治環境が全く異なる同盟の米国は、韓国の立場を理解しようとしなかった。「維新体制」を崩壊させようとする平壌側との政治謀略戦争で、自らを守ろうとする大韓民国を助ける友邦はなかった。
労働党在日支部とその前衛隊にとって、アジア情勢の情報発信地の東京は非常に重要だった。アジアはもちろん、アフリカや中南米地域まで、地球全体をカバーする共産権の攻勢は激しかった。韓国は国連外交でも米国の助けが必要な立場だった。米国は、同盟の韓国のこのような弱点を徹底的に利用した。
(つづく)