尹錫悦政権発足後、韓国は脱・中国路線に舵を切り、米国との同盟強化に取り組んできた。この傾向は、経済活動でも同様だ。韓国貿易協会の統計資料によると、今年第1四半期の対中輸出の割合は19・5%で、18年ぶりに20%を割った。一方で対米輸出の割合は17・7%と、20年前と同じ水準まで回復した。この傾向が続けば、対米輸出が対中輸出を上回る可能性さえある▼経済はシビアな世界である。大統領の外交政策路線と合わせたから、という理由ではないだろう。韓国産業通商部のデータによると、2月の韓国の輸出品目で自動車が半導体を抜きトップになった。実に約6年半ぶりだ。自動車の最大の輸出先は米国、そして落ち込んでいる半導体の輸出先は中国が首位に君臨する▼韓国経済は特に近年、リソースの選択と集中を行い、成功を収めてきた。サムスンは半導体に多くのリソースを割き、中国市場を重点的に攻略し、業績を拡大してきた。それは諸刃の剣で、半導体の需要の落ち込みによって第1四半期業績はリーマン・ショック時と同水準となった▼では、対米輸出の拡大により、対中輸出激減の穴埋めをできるかといえば、答えは「ノー」だ。米国はサプライチェーンリスクの管理を徹底しており、特定の部材調達を韓国にほぼ100%依存することはない▼韓国に必要なのは、輸出相手国の多角化、ポスト半導体産業の創出、そして既存技術の革新だ。輸出戦略の大々的な変化は避けられない。官民一体となった経済政策が必要な時期にきている。