コラム 北韓の「スパイ天国」という惨状

日付: 2023年01月31日 11時50分

 労働組合や教職員組合などによるデモやストのニュースに接して、常に気になっていたことは、必ずといっていいほど反政府や反米の言動が大々的に叫ばれることだ。
もしかすると、北韓のスパイどもが暗躍しているのではないかと懸念していたが、まさにその心配が現実のものであるとのニュースが流れたときは、ただただ驚きのみであった。
過日、済州道で「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」という地下組織の指令を受けて、反政府活動や利敵活動を行ってきた政党幹部が、スパイ防止当局の取り調べを受けているというニュースが流れた。「民主労総・市民団体を使って闘争せよ」という北韓の指令を受けていたということだ。
その政党幹部を5年以上にわたって追跡したところによると、その幹部は2017年7月にカンボジアのアンコールワットで北韓の対南工作員と会い、済州道の地下組織「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」の設立と運営、暗号通信法などの教育を受けたという。
その後、済州道の労働界や農民運動の幹部らを包摂、「民主労総傘下の済州4・3統一委員会掌握」「反米闘争拡大」「尹錫悦糾弾排撃」「韓米軍事訓練中断」「米先端兵器導入反対」「反保守闘争」など具体的な活動を指示したとし、それらの一部が実行されたという。
全国民主労働組合総連盟(民主労総)も家宅捜索を受け、幹部らがカンボジアやベトナムで北韓工作員から工作資金を受け取り、傘下の労組に地下組織をつくり、反政府活動を行った疑いがあることが明らかになった。
これは、北韓の指令に従った悪質な国家破壊活動だ。左派勢力はカネに汚染された亡国勢力というほかなく、韓国はまさに北韓スパイ天国という惨状だ。
尹錫悦政権発足後初めてのスパイ組織摘発事件で、スパイ防止当局は、「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」が済州道だけでなく韓国の他地域でも結成され、暗躍している可能性があるとみて、捜査を拡大している。
取り調べを受けている政党幹部は容疑を否認し、政党関係者も「政府が公安事件と決めつけて攻撃している」と反発しているが、5年以上にわたって北韓の対南工作機関の指令文を受け取り、済州地域を中心に韓米合同軍事演習中断、韓日米軍事同盟解体、米国産先端兵器導入反対などのスローガンで抗議集会、抗議訪問、署名運動などさまざまな反政府、反保守、反米デモの扇動闘争を展開した。
「ヒウッ・キヨック・ヒウッ」は、尹錫悦大統領当選直後の昨年3月、「韓米合同軍事演習に反対する大衆闘争を集中展開し、就任を控えた尹錫悦氏はもちろん、米国にも強力な圧迫攻勢をかけなければならない」という内容の指令を受けた。
さらには、「民主労総4・3統一委員会、学校非正規職労組済州支部、建設労組済州支部をはじめとする労組と進歩運動団体を組織し、進歩政党候補を後押しする支持運動を展開せよ」という指令文も受け取ったという。
そうした指令により、民主労総済州本部は昨年6月の統一地方選の3週間前に当たる5月、済州道庁前で左派陣営の候補を支持する記者会見を行った。
そのほかにも、「米軍基地撤廃、北南宣言履行」「労組を結束させ反米闘争で先鋒的役割を果たせ」「民主労総4・3統一委員会、民主一般労組連盟などリベラル運動団体を前面に出し、反保守団体の体制を組み直し、拡大改編する方法として、ロウソク団体を組織し、そこに地域の中道層を網羅させ闘争動力を確保せよ」などの指令を受けたという。
韓国内に居住しているなら、北韓金正恩体制が悪の限りを尽くす犯罪集団であることを明白に知ることができるのに、その指令を受けて韓国破壊工作を扇動、奔走するとは、どういう神経をしているのか、はなはだ理解に苦しむ。
政府というものは、その国民を幸せにしてこそ存在価値があるはずだが、金正恩体制は、国民を幸せにする体制でないことを肝に銘ずるべきだ。

(韓登)


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