編集余話

日付: 2022年11月08日 12時04分

 156人が死亡した梨泰院の雑踏事故。ハロウィンの仮装イベントを楽しみに来た被害者は、直前までまさか圧死するとは思わなかったはずだ▼事故翌週のソウルでは、反政府デモが行われた。警察の責任追及だけでなく、大統領の退陣まで要求する内容だ▼事故原因を探る一連の報道を通じ、地元警察の対応が不十分だった疑惑が浮上した。だが、責任を問えるとしたら、せいぜい地元警察署の署長レベルだろう。大統領まで責任を求めるのは筋違いといっていい▼誤解を恐れずに言うならば、デモ参加者は他責思考なのであろう。他責思考なので、常に責任は自分以外の「誰か」にある。だから何か起きても自分は悪くなく、反省もしない▼2014年のセウォル号事故もそうだった。最大の責は船長と運航会社にあったはずが、なぜか海洋警察の解体、大統領の退陣にまでつながった。そして、自分たちの責は忘れ去られた▼梨泰院の事故でいえば、危険なほど混雑した雑踏を避けていれば、事故は防げていた。主催者もおらず、交通整理もされていないなら、なおさら自分で自分の身を守らなければ▼この感覚が韓国社会全体で麻痺しているのではないかと疑われるのが、事故後のソウル市長の発言である。事故後の会見で「無限の責任を感じ、深く謝罪する」と述べたのだ▼責任の一端はソウル市にあるかもしれない。だが、「無限」とはどういうことだろうか。無責任な非難に無自覚に応じる謝罪。これが続くなら、同じような事故は繰り返されるだろう。


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