韓国では10年以上前から、住宅価格の過度な高騰が懸念されてきた。歴代政権も経済政策の第一に不動産価格の安定を掲げたこともあったが、効果はみられなかった▼不動産価格が異常な水準で高止まりしていたことは誰の目にも明らかだ。OECDの調べによると、2021年の韓国人の平均年収は約3500万ウォン。それに対してソウルのマンションの平均価格は昨年時点で9億ウォン。日本では一般的に年収の7倍までが購入適正価格と言われているので、遠く及ばないことがわかる▼韓国人にとって、不動産は資産の”花形”であった。漢江の奇跡と言われた時代から不動産価格は上昇を続け、日本のバブル期のごとく、「下がらない」という神話が生まれた。土地・マンションという現物を好む国民性もある▼かつて人々は、家計に余裕があれば住居用とは別の投資用マンションを買った。その後、家計に余裕がなくても、値上がりを見込んで投資用マンションを買う人が出始めた。今や、若年層は無理をしてもマンションに手が届かない▼そのマンション価格が下落し始めた。韓国銀行の利上げによるものだ。転売目的で購入した人の多くは、金利上昇で買い手がつかず、返済負担だけが重くのしかかる。いよいよ不動産バブル崩壊かとの声は、現実味を帯びている▼政府は15億ウォンを超えるマンションにも住宅担保ローンを認めるなど、融資の敷居を一気に下げた。急場しのぎには効果があるだろう。だが、はたしてバブル崩壊の危機を押し戻す力になるだろうか。