北韓が9月25日から今月1日までに、弾道ミサイルを4回発射した。1週間に4回の発射は、過去に例のない頻度だ。
今年に入ってから、短距離から中距離、そして潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)など各種のミサイルを実に22回も発射した。12月までさらに増え、核実験を強行する可能性も高まってきた。
北韓がミサイルを発射するたびに、ミサイルのスペックから始まって、発射の狙い、タイミングなど、様々な視点から検証されている。しかし、「ミサイル能力の進歩」という重要なポイントについては見落とされがちだ。北韓のミサイル能力は、発射実験を繰り返すことで着実に向上している。
金正恩総書記が北韓の最高指導者となって以後、ミサイル発射の回数は金正日時代と比べて格段に増えている。これは金正恩氏がミサイル開発に国力を投入していることを意味する。
国民は貧困にあえぎ、国際社会から反発を招いているにもかかわらず、金正恩氏はなぜミサイル開発に固執するのか。答えは簡単である。北韓軍(朝鮮人民軍)が弱体化しているからだ。
総兵力は100万から140万人と推定される北韓軍だが、多くは徴兵制でかり出された兵士で、普段は農場支援や建設支援などの肉体労働者であり、戦闘兵力として計算できるのは、多く見積もっても半数以下だろう。海軍も空軍も存在するが、兵器は老朽化している。
万が一、6・25戦争(朝鮮戦争)が再開した場合、韓米と北韓の戦力差は明らかだ。遊撃戦(ゲリラ戦)で局地的に食い下がったとしても、北韓の最終的な敗北は目に見えている。
金正恩氏も圧倒的な戦力差については重々承知しているはず。そこで目をつけたのが、ミサイルという「飛び道具」だ。
韓日、さらには米本土まで到達可能で核爆弾を搭載できるミサイル、すなわち「核ミサイル」を開発すれば、兵力差を縮めることができる。万が一、戦争が勃発すれば、勝利こそできなくても「痛み分け」に持ち込める。実戦配備すれば、韓米のみならず他国もやすやすと北韓に対して軍事行動を仕掛けられなくなる。なによりも、韓国や日本のように核武装していない国家に対して、圧倒的な脅威となりうる。
北韓は核開発に関して「自衛的措置」と主張しながら正当化してきたが、金正恩氏は9月8日に行われた最高人民会議での施政演説で「先に核を放棄したり非核化するようなことは絶対にあり得ず(後略)」「核武力はすなわち祖国と人民の運命であり、永遠なる尊厳である」などと明言した。
金正恩氏が加速化させた核ミサイル開発は、軍事を乗り越えた長期的な国家戦略になりつつある。ミサイル発射に併せて、遅かれ早かれ核実験も強行するだろう。
「狙い」や「タイミング」など表面的な視点だけで見ていると、核武装国家「北韓」という、より大きな脅威を見落とすことになる。