デイリーNK高英起の「高談闊歩」第27回

いつまで拉致問題を放置するのか
日付: 2022年09月21日 13時04分

今から20年前の2002年9月15日、日本と北韓の間で史上初の日朝首脳会談が行われた。小泉純一郎元首相と会談した故・金正日総書記は、日本人拉致問題の非を認め、日朝平壌宣言が2日後の17日付けで調印された。宣言は、日本人拉致問題などの「懸案事項」について、北朝鮮側が再発防止のため「適切な措置」を取るとしている。また「日朝間の不幸な過去を清算」するとして、過去の日本による植民地支配の清算のため、国交正常化後に日本が経済協力を行うことを明示した。しかし、この20年間「日本人拉致問題」をはじめ、日朝間の問題が進展したとは言い難い。北韓も同じ認識をもっているようだ。
日朝首脳会談が開かれた9月15日にあわせて、日本との交渉を担当する宋日昊(ソン・イルホ)大使が、日本が「宣言を反故にし、両国の関係を最悪の対決局面に追い込んだ」と、非難する談話を発表した。宋氏は談話で「日本側とさまざまな形式の接触と対話、会談を行いながらたゆまぬ努力を傾けてきた」と強調する一方で、日本人拉致問題は「解決済み」だと強弁した。さらに「朝鮮民族に前代未聞の不幸と苦痛を被らせたのに反省どころか、何の罪意識さえ覚えず、むしろ『被害者』に変身しようとする日本の行為こそ、偽善の極み」だと、痛烈に日本を非難したのだ。拉致問題に対する北韓の頑ななまでの不誠実な姿勢が、日朝交渉の前進を妨げてきたのはいうまでもないが、日本政府もさらに強固な姿勢を見せねば、前進は厳しいだろう。政権が替わるごとに、時の首相は「拉致問題は最重要課題だ」と強調し、拉致問題の集会にも出向いてきた。先日も岸田首相は「(02年以降)一人の拉致被害者の帰国も実現していないことは痛恨の極みだ」と述べた。未解決問題に殊勝な姿勢を見せるのはいいが、積極的な姿勢を取っているとは言い難い。
拉致被害者家族や日本社会が望んでいるのは、一日も早い解決と生存者の帰国である。この20年間、唯一といっていい成果は、14年に日朝間で結ばれたストックホルム合意だ。裏では日朝双方の妥協と譲歩があったと思われるが、金正恩政権が日本に多少なりとも歩み寄りを見せたことは間違いない。しかし合意後の交渉は停滞が続いている。このままでは平壌宣言同様、事実上無効になりかねない。合意にこぎつけた安倍晋三元総理は、旧統一教会問題に端を発する凶弾に倒れた。日本政府はこの20年間、結果が出せていないことをより真摯に受け止め、解決に向けて取り組むことが求められている。
また日本社会も、もっと拉致問題に目を向け、解決に向けてさまざまな関心を寄せるべきだろう。日朝首脳会談が行われた9月15日や、横田めぐみさんが拉致された11月15日の前後に大手メディアは拉致問題に関して報道するも、1~2週間が過ぎると、一部メディアや被害者にゆかりのある地方紙を除き、拉致に関するニュースを目にしなくなる。
日本人拉致問題が風化されてしまえば、日朝間の不幸な過去は永遠に精算されない。北韓が何と言おうと、日本政府は拉致問題解決に向けて粘り強く動くべきだ。


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