韓日ビジネス成功の秘訣

互いの違いを強みに変えて
日付: 2022年08月15日 07時38分

 文在寅政権下で戦後最悪になったと言われる韓日関係だが、尹政権の誕生により回復の兆しが見えてきている。韓日両国はこれまでも互いを補完し合い、経済面ではWINWINの関係を築いてきた。コロナ禍で民間交流は少なくなったとはいえ、日本での韓流ブームはさらに熱気を帯びてきており、韓国に対するイメージは年々向上している。一方、韓国でも日本製品の人気は高い。文政権下では政府主導のNoJapan運動があり、日本製品の売り上げが激減したが、現在は回復傾向にある。今後、政治面の問題さえ解決されれば、経済的な交流が一層活発化することは確実だ。今回は韓日に関わるビジネスで成功している人や企業を取材。両国の架け橋となっている人たちに話を聞いた。

道内企業の海外進出を支援

慶尚南道東京事務所(地域広報)

 慶尚南道東京事務所は2009年に、慶尚南道が対日輸出の拡大と日本からの投資誘致を目指し開設した公的機関。以来、対日輸出と投資促進の足場を整えるとともに、道内企業の海外進出やマーケティング活動をサポートしてきた。慶尚南道は農産物、海産物に恵まれ、自動車関連・航空関連企業も多く、日本との貿易も盛んな地域。同事務所はこれまでも、ビジネス商談会や展示会、国際交流支援、観光広報活動など、韓日間の友好交流増進のために幅広い活動を行ってきた。
近々では、今月24日から26日まで開催される「2022東京国際水産食品博覧会」で「慶尚南道水産食品館」を運営。道内8社の26商品を展示・広報する「慶尚南道水産食品館」を直接運営する。昨年も同博覧会に参加したが、111件98万1000ドルの商談実績を収めた。
さまざまなビジネスをサポートする慶尚南道東京事務所だが、現在注目されるのが、「慶尚南道愛知県間航空宇宙産業分野協力フォーラム」だ。
韓国の21年の防衛産業の輸出額は70億ドルで、これまで最高だった14年の36億ドルから倍増した。最先端装備を有する次世代イージス艦「正祖大王」や超音速戦闘機「KF21」の開発など、近年の韓国の軍事産業の躍進はめざましい。慶尚南道は韓国航空産業の70%のシェアを占める航空関連企業が集まる。愛知県は、名古屋市を中心に日本航空産業の50%のシェアを占める日本の防衛産業の拠点であることから両国の航空産業中心地域同士の交流を活性化させるため、同フォーラムと企画商談会を9月22日に名古屋で開催する。
今回のフォーラムと商談会をきっかけに、今後継続的な交流と協力が行われると期待されている。
こういったビジネスマッチングの場を設けることが同事務所の主な仕事だが、一過性の商談に終わらせないことが重要だという。
「韓国の企業も日本の企業もどちらも自社の製品を売りたい。売りたいだけではなかなか話が進まない」
長期的な視野をもって場を設けることが大切だ。今回の「航空宇宙産業分野協力フォーラム」も同様だ。韓日企業で一種のワーキンググループを作り、長期間にわたって情報交換をしていく予定だという。
「互いに得意な分野が異なる。いま商談がまとまらなくても、情報交換を継続的に行っていくことで、将来的にお互いを補完するようなビジネスが成立していく」
こういった活動以外に、在外道民と韓国との架け橋としての役割も担っている。
1975年から日本にある9地域の在日慶尚南道道民会と協力し、毎年春に郷土植樹記念行事を開催。これまで43回行い、毎回約300人が参加する。最近では、慶尚南道出身の在日韓国人2・3世の親族を探してほしいとの依頼があるなど、在日同胞との交流も積極的に行っている。

 (慶尚南道東京事務所の(左から)閔貞銀所長、金昌燮部長、鄭相林次長)

 

 

 

 

 

 

 

食品で韓日交流に努める

市場タッカルビ(韓国料理店)

 韓国食品スーパーマーケット「ソウル市場」や、チーズタッカルビ発祥の飲食店として人気の「市場タッカルビ」などを経営するハッピーグループ(晋永燮代表取締役)のハッピー食品・宮本研常務取締役を訪ねた。
同グループは創業者である晋社長が、学生時代に松下幸之助氏の経営理念に感銘を受けて、日本の大学へ留学し、韓日ビジネスに挑んだことから始まった。
最初は当時、飛躍著しかった通信業の代理店業から始めたが、「食」を通じて母国の文化や歴史を日本に伝えたいと思い、2005年に日韓文化交流センター「韓流館」と韓国伝統料理店「韓サラン」を、09年には「ソウル市場」をオープンさせた。
晋社長の経営方針について宮本常務は「学生時代から争いごとが嫌いで、人を大切にする。ビジネスでも信頼関係を一番に考える」と話す。在日同胞についても「在日同胞のみなさんが戦後から必死に、日本や祖国のために社会貢献をして相互理解を深めてきたから、自分たちがこうして日本でビジネスができている。その感謝を忘れてはならない」と常々語っているという。
その精神が、ビジネス展開にも表れている。たとえば主幹事業である「ソウル市場」の名前を冠した店舗や、店舗内の韓国食品コーナー設置は「LAOX」や「ビレッジ・ヴァンガード」など全国に約800カ所あるが、直営店やフランチャイズ展開は行っていない。
「弊社から商品を卸して扱うだけで、自由に『ソウル市場』の名前を使っていただいている。法的契約を結んでロイヤリティーを得ることよりも、地域ごとの地場産業発展を願い、地産地消を生かして自由な発想で店舗やコーナー展開を行ったり、日本と韓国の食材を融合させた新しい食文化が生まれることを望んだ結果」とのこと。
「たとえば主力商品のキムチに長野県のクレソン、福井県のケール、山梨県のわさびなどを合わせる商品開発が、地域活性化につながる。さらには食材を提供しあうだけではなく、その根底にある農地や森林保護、農家や林業従事者などを支えることまで考えるのが、本当のSDGs」と述べる。また、大量生産やチェーン展開を行うよりも、地場産業として地域発展の規模で行うことが、過渡な生産や消費を抑え、経費削減にもつながるという。ムダなフードロスも生まない。あくまでも、地域貢献を行う企業でいたいというポリシーであり、食品で韓日親善に努めていくとのこと。
最後に、大ヒットしたチーズタッカルビの発祥について聞いてみた。
「韓国の家庭それぞれで『チーズをかけたらおいしいかも』といった工夫はあっただろうが、正式に『チーズタッカルビ』という商品を考案したのは弊社。登録商標を取得して独占するよりも、みんなが扱って世間に広く知られる方がうれしいということで、商標は取らなかった。ただし、開発したのは弊社なので『発祥の店』と謳っている」と説明した。

 (市場タッカルビを一躍有名にしたチーズタッカルビと同社の宮本研常務取締役)

 

 

 

 

 

 

現地で最初の一歩を手助け

韓日情報貿易(韓日貿易サポート)

 韓日情報貿易(KJIT)は、主に韓国政府機関などからの委託を受け、イベントの開催、韓日間の企業のビジネスマッチングを行っている。そのほか、商談会&展示会コーディネート、バイヤー招致事業、輸出入・販売代行、韓国政府機関事業などだ。
「グローバルビジネスのスタート 両国の現地パートナーとして最初の一歩をサポートする」を基本理念に企業とのビジネスネットワークを構築し、販路開拓のサポートを行ってきた。
同社の強みは、これまで積み重ねてきた顧客データだ。2009年の日本法人設立以来13年間にわたって、両国のパイプ役としてさまざまな企業と接してきた。一過性のビジネスではなく、日本に根を下ろし、誠実に顧客と向き合ってきた。
韓日ビジネスを成功させる秘訣は、トラブル処理をどのように行うかにかかっているという。国が違えば文化も異なる。「シジャギパニダ(始まりが半分だ)」という文化の韓国と、完成品を求める日本、両国では商習慣が異なる。問題が生じたときに、いかに誠意をもって解決に導くかが重要。日本人は信用を重視する。トラブルをおざなりに処理すれば、長期にわたってのビジネスは難しいだろう。
同社は、イベントでの「集客」だけではなく、「訪問」も行い、日本企業と積極的なコミュニケーションを図ってきた。ビジネスマッチングというと、イベントを開き場を提供、(1)出展企業を募る(2)イベントに訪れる参加者を集客するという部分がフォーカスされがちだ。だが同社は直接企業を訪問し、コネクションを広げてきた。
一方、コロナ禍のもと、ビジネスの手法ががらりと変化した。これまでの「集客」「訪問」というピースのほかに、「オンライン」という選択肢が増えた。集客にしろ、訪問にしろ「対面」と「オンライン」の2通り考えられるようになった。「コロナ禍をマイナスにとらえるのではなく、コロナをきっかけに選択肢が増えたと考えている」という。同社は以前よりスカイプを使って商談会を行っていたこともあり、コロナ禍でのオンライン商談会への移行もスムーズだったという。

 (KJITがサポートし、6月に開催された韓日貿易協会商談会)

 

 

 

 

 

 

 

韓国語で世界とつながる

トリリンガルのトミ(ユーチューバー)

 トリリンガルのトミさんは、日本および海外に向けて韓国語学習のための情報をYouTubeで発信している。日本と海外合わせて約12万5000の登録者を持つ、韓国語学習系YouTuberとしては第一人者だ。自身も韓国語能力試験(TOPIK)6級、「ハングル」能力検定試験1級を有する折り紙付きの韓国語上級者。さらに国際コミュニケーション英語能力テスト・TOEICも985点を記録するなど語学の達人だ。
さまざまな韓国語関連活動が評価され、今年4月からはTOPIKの広報大使に任命された。
YouTubeを始めたきっかけは、自身が経営する韓国語教室の生徒のサポートを、授業時間以外にできないかと考えたことだった。最初は軽い気持ちで始めたが、TOPIK受講者のために『韓国語能力試験(TOPIK)初級1671語 聞き流し(リスニング)』という動画を公開したところ、評判を呼び、韓国語学集系YouTube動画としては異例の再生回数を記録した(現在125万超の再生回数)。その後も「他の韓国語学習系YouTuberとなるべく差異化したコンテンツを」という発想で「無料なのに有料以上」の内容の動画を作成、自然と登録者数が増えていった。
現在はYouTubeの他に、韓国語学習教材の執筆や、オンラインサロン、講演などさまざまな活動を行っている。
提供するサービスのなかでもっとも人気なのが「韓国語の3行日記添削」。独学でも正しい韓国語を効率よく身につけることができればと思いはじめたサービスだ。100文字以内の文章をLINEで送信すれば、24時間以内に添削された文章が戻ってくるというもの。今後は、TOPIKの作文対策、企業と韓国語学習者とのマッチングサービス、日本・海外のYouTubeチャンネルを持っていることから、韓国語という共通言語で世界の学習者をつなげていきたいという。

 

 (「トリリンガルのトミ」HP。多彩なサービスを掲載)

 


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