デイリーNK高英起の高談闊歩 第25回 

光復節にあえて「祖国統一」を問う
日付: 2022年08月15日 07時24分

大韓民国は8月15日、日本の植民地支配から解放されて朝鮮の独立を祝う光復節77周年を迎えた。北韓はこの日を解放記念日としている。南北双方が「独立」「解放」の記念日としているが、この記念日直後から韓半島は米軍とソビエト連邦(現ロシア)軍によって分割占領された。
1948年には大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国(北韓)が建国され、50年には6・25戦争(朝鮮戦争)が勃発。53年に休戦して以後、韓半島の分断状況は続いている。祝福すべき光復節は、見方を変えれば韓半島分断の出発点でもある。
77年ということは分断状況100年まで23年しか残されていない。また、69年つづく戦争状態はあと31年で「百年戦争」となる。6・25戦争は休戦状態であり、停戦したわけではないのだ。南北の指導者がいくら会談を重ねようと、戦争中であることに変わりはない。さらに法律的には互いを国家として承認せず、南半部を不法に占拠する集団としている。
韓国も北韓も「韓半島に統一国家を樹立すること」を国是として掲げているが、統一のために全勢力を費やしているかといえば、必ずしもそうではないようだ。声高に「統一しなければならない!」と唱えるが、統一国家を樹立するための具体的なロードマップは見えてこない。韓国では、北韓経済が安定してより民主的な国家になってこそ統一が可能という説も見受けられる。しかし北韓の慢性的な経済難は相変わらずであり、金正恩政権が民主化する兆しはまったく見えてこない。北韓では故金日成主席が「高麗民主連邦共和国」という連邦制を掲げたが、これは北韓の独裁世襲を維持するために打ち出された方針にすぎない。現時点で論じられる南北双方の「韓半島の統一論」は机上の空論に過ぎない。
韓国世論も南北統一が厳しくなっていることはリアルに感じ取っているようだ。2021年にソウル大学が実施したアンケートによると、統一が必要かという質問に対して、20代は32・7%が「必要」で、42・9%が「不要」。30代は40・9%が「必要」で、34・6%は「不要」。60代以上は57%が「必要」で、22%が「不要」という結果だった。韓半島全体が統一を望んでいるわけではない。統一によって生じるデメリット、とりわけ経済悪化などを加味すれば、より否定的な回答が増えるだろう。なによりも、金正恩政権が最も統一を望んでいないかもしれない。金正恩総書記にとって独裁世襲体制を維持することが唯一の生き延びる道だ。統一によって体制基盤にリスクが生じるなら、未来永劫「統一」を選択しないだろう。連日、あちこちで政治デモが起きている韓国との統一は、金正恩総書記自らが民主主義の洗礼を浴びることを意味し、自ら墓穴を掘るようなものだ。金正恩政権による統一、すなわち「赤化統一」となれば話は別だろうが、韓国がそれを望むことは決してない。「統一日報」の紙面で書くのはいささか気が引けるが、反論は百も承知で言おう。韓半島の統一が本当に必要なのか、冷静に議論する時期が来ているのではないか。


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