積弊の清算を声高に訴えていた文在寅前政権に対し、尹錫悦政権による疑惑の追及が始まった。野党は「報復だ」と反発しているが、追及がどこまで進むのか、捜査の推移に関心が集まっている▼韓国の検察は先月、文政権時代に産業通商資源相を務めた白雲揆氏に対し、傘下機関のトップ人事に介入したとして逮捕状を請求した。請求は裁判所によって却下されたものの、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断されただけであって、容疑については「事実と推測される」とされた▼3月の大統領選で尹大統領と争った李在明氏が行ったとされる宅地開発を巡る不正や、同氏の妻の公金流用疑惑にも捜査のメスが入っている。いずれも、文政権時代に疑惑として追及されたことはあるものの、深部まで掘り下げられることはなかった▼4・15総選挙、大統領選、6月の地方選挙にも不正疑惑はあった。コロナ下で行われた選挙とあって、ウイルスの感染者や隔離者を対象とした投票もあったのだが、彼らの票がごみ箱に入れられたり、別人による「なりすまし」投票の疑惑もあった。選挙に関する不正疑惑だが、文政権時代には選挙のたびに提起されてきた。それに対する捜査は行われなかった。公正選挙は自由民主主義の根幹をなすものである▼文前大統領は、退任間際に検察の捜査権限を制限する検察庁法と、刑事訴訟法の改正法を公布した。在任中の不正が追及されることへの”先手”である。施行は9月。不正の徹底究明がさらに難しくなる。残された時間は少ない。