ソウルを東京に擬える 第12回

遊園地とプール 心に刻み込まれる休日の記憶
日付: 2022年07月05日 10時24分

ロッテワールド
東京ドームシティ
 デートに子連れにと、人々の思い出の場として心に刻み込まれる遊園地。韓国では遊具のある施設を「ノリ(遊び)公園」と呼ぶが、ここでは両都市の遊園地を擬えてみたい。
ソウル市内にある遊園地といえば、蚕室にあるロッテワールドの名が挙がるだろう。ソウル五輪の翌年に開業したテーマパークで、石村湖水にはランドマークとなる白雪姫の城が堂々と構え、屋外には所狭しと絶叫系アトラクションが密集している。世界最大規模の屋内施設には乗り物があり、そこではパレードやショーも行われる。韓国にはディズニーランドはないが、ロッティとローリーというキャラクターや、メルヘンチックな装飾が心を満たしてくれる。
そんなロッテワールドは2000年代初頭に、東京にも建設される構想があった。その場所は葛西臨海公園駅近くにあるロッテ葛西ゴルフ周辺の用地である。ディズニーランドがある舞浜駅までは電車でわずか3分であり、もし実現していたら熾烈な客取り合戦が行われていたに違いない。
ロッテワールドのように都会の狭い敷地にアトラクションが密集する点では、東京ドームシティアトラクションズ(旧後楽園ゆうえんち)が思い浮かぶ。後楽園駅の改札を出ると乗り物の轟音とともに叫び声が聞こえてくる。戦隊モノのヒーローショーもよく知られており「東京ドームシティで僕と握手!」というテレビCMを思い出す人も多いはずだ。
23区内では国内最古の花やしき、改修を経て今年3年ぶりに営業を再開したあらかわ遊園、屋内型のナンジャタウンがあるが、ソウル市内にはオリニ大公園に小さな遊園地があり、東部の龍馬ランドは11年に閉園したものの、その後はTWICEやBTSなどK―POPアイドルのミュージックビデオの撮影にも使われ、注目されている。
そして夏のレジャーには水遊びが欠かせない。ソウル市内で身近な存在なのは、漢江沿いに点在する漢江公園のうち8箇所にあるプールや水遊び場である。こちらは毎年6月下旬にオープンし、猛暑の話題とともにニュースとして映し出される。
東京では夏休みになると、テレビで真っ先に中継される場所はとしまえんのプールであった。世界初の流れるプールやウォータースライダーのハイドロポリスが目玉であり、週末には花火が打ち上げられた時代もあった。そして園内のカルーセルエルドラドは世界最古級の回転木馬としてシンボル的な存在だった。20年夏には94年に及ぶ歴史に幕を下ろしたが、閉園を惜しむ声は大きかった。
ちなみに、としまえんは練馬城を築城した豊島氏に由来するが、現在は東京都が練馬城址公園(仮称)として整備を進めており、今後はハリー・ポッターのテーマパークもできる予定だ。
そんなふうに幻となった遊園地はソウルにもある。北ソウル夢の森(プクソウルクメスプ)としてソウル市により整備された公園は、08年まではドリームランドと呼ばれる遊園地であった。ソウルの山々と高層アパート群を見渡せる展望台は人気ドラマ「IRIS」のロケにも使われ、新たな名所となったが、かつてのドリームランドには大型の遊具はもちろんプールもあり、アイドル歌手を起用した番組の撮影などにも使われていた。都心からの距離感からしても、としまえんと似ており、跡地が公園へと生まれ変わることは同じだ。
ソウル郊外ではエバーランドやソウルランドが大規模なテーマパークとして知られるが、東京近郊ではディズニーランドを筆頭に、よみうりランドや西武園ゆうえんちが人気の遊園地だ。時代とともにアトラクションが変わり、なかには惜しまれつつ閉園したところもあるが、その名を聞けば、恋人や家族とともに過ごした記憶を蘇らせてくれるだろう。

吉村剛史(よしむら・たけし)
1986年生まれ。ライター、メディア制作業。20代のときにソウル滞在経験があり、韓国100都市を踏破。2021年に『ソウル25区=東京23区』(パブリブ)を出版。


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