NATOの東進とアジアへの拡張をどう見るべきか

【社説】
日付: 2022年07月05日 10時12分

 ウクライナを支援しているNATOが先月28日の首脳会議(スペイン・マドリード)で「新戦略概念」を採択した。今回の首脳会議では、ウクライナ戦争の拡戦を防止し、北韓の核と弾道ミサイル廃棄などを要求した。中共やロシアのような「権威主義国家」への対応を強調した。ロシアからヨーロッパを防御するため、加盟国の国防費増額なども合意した。
NATOは、米国の要求に応じて、すでに昨年の首脳会議(6月14日、ベルギー)の共同声明で、中共を新しい安保脅威「構造的(体系的)な挑戦」と規定した。中共の庇護を受けている北韓の核と弾道ミサイルの廃棄を要求、対北制裁の完全な履行を強調した。
NATOの「戦略概念」は概ね10年ごとに変わってきた。2010年の戦略概念では、NATOはロシアを戦略的パートナーと規定した。つまりNATOは、ロシアを戦略的パートナーから脅威に変え、ロシアからヨーロッパを護るとした。もちろん、NATOの戦略概念は彼らが決めるものだ。ところが、NATOは今回の首脳会議に韓、日、豪、ニュージーランドを特別パートナー国として招待した。4カ国を招待したのは、対中戦略においての協力、連帯のためと考えられる。当然、NATOの新戦略概念が気になる。
率直に言えば、NATOの主張は、国際社会から見て、納得し難い点がある。特に、ロシアからヨーロッパを護るという主張は説得力が足りない。ロシアはNATOの東進に強く懸念を表明してきた。ロシアの立場も尊重されねばならない。東進しないとの約束を破ったのはNATOだ。ミンスク協定を破棄するようにしたのも米国だ。
今、NATOのアイデンティティーと路線が曖昧だ。NATOは、ロシアが回復し発展することを望まないように見える。西欧はロシアを友人として受け入れようとせず、ロシアが弱い国であるよう望むようだ。EUは自らの基準を周辺国、国際社会に強要する。言葉ではウクライナ戦争の拡戦を防ぐと言うが、米・英の実際の行動は、戦争の持続を督励している。今回のウクライナ戦争が米・英などの代理戦争であることはすでに明白だ。米・英の指導部は、ロシアへの怨念のため、ロシアが中国共産党と接近するようにした。本当にロシアを弱体化させたいなら、東西冷戦のとき、ニクソンとキッシンジャーがやったように中共と離すのが戦略的に妥当な措置だろう。
NATOは、ロシアを制圧するために国防費をGDPの2%以上にするという。米国は陸軍第5軍団司令部をポーランドに移転するなど、ヨーロッパ駐留軍を増強、ロシア軍を支援した中国企業制裁に乗り出した。そもそも、エネルギーと食糧を自給する大国を、制裁で屈服させるという考えは非現実的だ。
ロシアと中共は、NATOに対抗して同盟の構築に出た。当然のことだ。NATOが、国際社会の対決的なブロック化を促進している。NATOは、「権威主義統治国家」を制裁すると言うが、第3世界のほとんどは権威主義統治体制だ。何よりも、西欧自体がブリュッセルのEU官僚たちが個別国家の主権まで制約、統制する体制ではないか。
結論として、中共の脅威に対する共同対処という大義にもかかわらず、EUは大韓民国の大事なパートナーだが、NATOのアジア拡張には賛成できない。
韓国は韓半島を支配しようとする中国共産党と戦い、北韓を解放せねばならない。だが、韓国はロシアとまで敵対し、ウクライナのようにNATOの代理人になるわけにはいかない。韓米相互防衛条約は太平洋地域を対象とする。NATOとは共同目標を中心に協力すればよい。


閉じる