文在寅大統領の任期も、残すところ1カ月を切った。すでに話題は新大統領となる尹錫悦氏の政策や手腕に移っているが、執務室を去るその日まで、大韓民国の大統領は文氏である▼文大統領の功罪のうち、最大の”罪”の一つに挙げられるのが韓国の憲法精神と法治システムを徹底的に破壊してきたことだ。その締めくくりともいえるのが、「検察改革」である▼ご存知のとおり、尹次期大統領は元検察総長であり、文政権の「検察改革」が始まった当時その職にあった。そして大統領就任目前に与党から国会に提出されたのが、検察の捜査権をはく奪する法案である▼既存の検察庁法は、検察が「6大犯罪」の捜査権を持つと定義している。「6大犯罪」とは、不正・経済・公職者・選挙・防衛事業犯罪・大規模惨事であるが、その条項が改正案では削除されているのだ▼これに対して現職の検察総長は辞表を提出。大検察庁も「明確な憲法違反である」と指摘している。だが、与党は月内に同法案を国会で成立させるとの立場だ▼文政権下で発足した組織に高位公職者犯罪捜査処(公捜処)がある。政府高官らの不正を捜査する組織との位置づけだが、公捜処職員への捜査権は検察に認められるという▼法治の正常化こそ、尹政権が最初に着手すべき課題である。しかし議会は「共に民主党」が過半数を占める。簡単にことは進まないだろう。現政権が自分たちへの追及の手を断ち切るべく作られたのが公捜処だ。「検察改革」も与党の保身に使われるのは明白だ。