帰国事業できた北韓に賠償命じず 「北と総連が虚偽の勧誘」認定

日付: 2022年03月29日 12時24分

 北朝鮮帰国事業で人権を侵害されたとして、北朝鮮へ渡ったのちに日本へ脱北した5人が北朝鮮政府を相手取り計5億円の損害賠償を求めた裁判で、東京地裁は23日、北朝鮮の違法性を認めつつも、原告の訴えを退けた。
北朝鮮への帰国事業は、「地上の楽園」という宣伝文句で1959~84年に行われ、在日朝鮮人やその家族ら計約9万3000人が北朝鮮に渡った。日本人妻に対しては3年経てば帰国ができるとの説明だったが、現実は劣悪な環境下に置かれて出国を許されない留置行為による北朝鮮への永住だったという。
訴訟では(1)日本の裁判所に訴えの管轄権があるか(2)北朝鮮政府の不法行為に損害賠償を請求できるかなどが焦点となった。
裁判では、日本国内で北朝鮮が朝鮮総連とともに、虚偽の勧誘行為を行ったことを認めたが、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する除斥期間の適用により、請求を棄却。留置行為については、北朝鮮国内で発生しているものとして日本に裁判管轄権がないと判断。原告側の福田健治弁護士は、「敗訴となったが、北朝鮮に対して裁判で争えるということと、事実関係の提出書類を裁判所が認め、審理対象となることが立証された」としたうえで、判決は不当であり、原告全員が控訴を予定していると述べた。
原告の一人である川崎英子さん(79)は、「日本の裁判所には感謝しているが、控訴をしても早く動いてくれないと生きているうちに結果を見られない」と涙ながらに訴え、「人権に対して時効を設けてはいけない」と記者会見で語った。


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