【BOOK】『世界でいちばん弱い妖怪』(キム・ドンシク著・吉川凪訳)

日付: 2022年03月18日 11時07分

 クスっと笑ってしまうタイトルと表紙のデザインに騙されてはいけない。この18編からなるショート・ショート集は、なかなか悩ましい。人間の世界に悪魔が、妖怪が、エイリアンがやってくる。たまに天使や魔法使いも顔を出す。そして、ある提案(ときには一方的な宣言)をする形で物語が展開するのだが…。
あるとき悪魔が突然「欲の深い人間を黄金に変えてやろう」と言い出した。欲の深い人間とは、きっと金持ち連中だ、人々はそう考えた。そしてその結末は…。またあるとき悪魔は「10年間80歳代の老人の姿で過ごせば、その後は死ぬまで30歳の姿でいられる」契約を提示、人々は契約をするかしないかの選択を迫られる。自分ならばどうするか。
キム・ドンシクワールドの中毒性は強烈だ。著者は学校がいやで中学を1年で辞めた。勤めていた鋳物工場の灰色のコンクリート壁を眺めていると、物語が湧いて出てきたという。それは、本書に登場するような妖怪たちの仕業かもしれない。とにかく、まだまだ読み足りないのは間違いない。幸いなことに韓国では数多くの作品集が出ているという。次の翻訳刊行が待ち遠しい。これは果たして韓国文学界からやってきた天使なのか、それとも…。
小学館刊
定価=1540円(税込)


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