キスン便り(第54回)在日の精神構造⑦ 名前こそが民族

日付: 2022年02月08日 12時16分

 通名で帰化していても本名を取り戻すことは可能です。一世がしていたのと逆のことをすればいいのです。金田で生きていても金を通名として生きます。孫やひ孫は生まれたときから金と名乗っていれば、金を本名だとみなします。戸籍名が必要なときは金田を使いますが、日常は金です。
薩摩焼きの沈壽官さんはこの方法で本名を守ってきました。だから未だに自分のルーツを辿ることが出来ます。通名で帰化してそのまま韓国との関係を絶ってしまうとルーツは消えてなくなります。それで良いとするぐらい韓国が嫌いでたまらないから帰化したという人も居るでしょう。そういう人はそういう生き方でいいと思います。自分の人生は自分しか歩めません。誰もが自分のルーツを知っていなければならないというものでもありません。
宇宙船に多国籍の者が乗り込んで移住する時代になれば、民族は邪魔なものになるかも知れません。一方で、人は言葉から逃れることが出来ません。日本人は日本語の通じる者同士で集まり、韓国人は韓国語が通じる者同士で集まります。こういう構造は宇宙船に何万人も乗り込んで他の星に移住するときには、トラブルの元になるでしょう。将来的には民族などというものはない方が良いということになるかも知れません。
しかし人間というのは言葉から離れられない存在です。だから民族の壁を完全に取り払うのは至難であると思います。在日は半島に起源を持つ存在です。歴史を調べれば、日本人のほとんど全てが百済や新羅から来たのは自明のことです。しかし教育の力もあり、日本人は自分たちは初めから日本人だったと思っています。そんな多くの日本人は自分たちの起源を忘れていますが、最近やって来た在日は韓国が儒教国家になったお陰で、ルーツを探ろうと思えば探れる状況にあります。
人は、自分はなぜ、いま、ここに居るのか、どこから来て、どこに行くのか、などと考えます。本名を維持していれば、韓国には各家に系図が有りますから、ルーツを辿ることが出来ます。また李や金や朴を名乗る日本人が多く居れば、日本の過去の行いを示す証拠となります。本名帰化をした家の一つ一つが歴史の生き証人になります。李や金や朴が日本人として存在出来る社会。そのような共生社会はこれからの日本にとっても必要なものです。在日が本名で日本国籍を得ることは日本の国益にも合致すると思っています。
韓国に住んでみて分かったのは、本国の人たちは韓国内に居る者だけが韓国人だと思っているということです。日本なんか比較にならないぐらい狭い考えで社会を作っています。普通の韓国人は在日はみんな日本国籍だと思っています。韓国の法制度自体も、大韓民国成立以前に国を出た者は居ない、という前提で作られています。在日を守る法律はどこにもありません。在日は韓国では邪魔者です。彼らは我々に戻ってきて欲しくないのです。在日は大韓民国成立時に韓国から切り捨てられました。在日が韓国内で生きて行くための法的手当が何もないという現実に直面すると、それは良く分かります。
在日のある社長に「海外でテロに遭ったらどうすればいいか」と聞かれました。私は即答しました。日本大使館に逃げなさい。韓国大使館に逃げても言葉も通じないし、相手にして貰えないですよ。日本大使館に駆け込めば日本はたぶん助けてくれます。万が一、韓国人はダメと言われたら日本の納税者だと言いなさい。言葉が出来ない韓国人は、韓国から韓国人として扱って貰えません。本国の人の頭の中に在日はかけらも存在しないのです。
そのような状況下、通名で帰化すると本当に何もかもが消えてしまいます。私は消されてたまるか、と思います。だから本名は究極の民族だと感じます。

李起昇 小説家、公認会計士。著書に、小説『チンダルレ』『鬼神たちの祝祭』『泣く女』、古代史研究書『日本は韓国だったのか』(いずれもフィールドワイ刊)がある。


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