【BOOK】『むくいぬ』(鄭芝溶・著/吉川凪 訳)

日付: 2022年01月19日 00時00分

 本書はエッセイも収録した詩選集で、タイトルになっている「むくいぬ」は、原語でサプサル犬、またはサプサリという。「サプ」は「追い払う」という意味があり、「サル」は「悪鬼のたたり」を指すという。ふさふさした長い毛を持つ可愛らしいイヌのイメージが、悪鬼を追い払ってくれると聞くと印象が変わる。
一つひとつの言葉が慎重に選ばれては置き換えられて、そうやって紡ぎだされた世界を楽しむ―それが詩の醍醐味だとすると、本書は詩人・鄭芝溶が描きだす言葉を存分に堪能できる作品集だ。作者は古語、方言、造語を多用することでも有名だという。読むたびに刺激される箇所が変わるのも、そんなところに理由があるのかもしれない。決して一筋縄ではいかないが、そこがまた面白い。様々な味わいが大きな魅力である。そして詩集の翻訳本を手に取るたびに思うことだが、訳者の並々ならぬ努力に敬意を表したい。
詩人が生きた時代背景は訳者解説に詳しいが、まずは何の情報も入れずに芝溶ワールドを楽しんでいただくことをお勧めする。
クオン刊
定価=2200円(税込)


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