◆ドラマと文学で探る韓国4 しなやかに闘う女たちに会いに②

ドラマ「師任堂 色の日記」×小説「滞空女」
日付: 2021年12月01日 00時00分

 今回は『師任堂〈サイムダン〉色の日記』の主人公、師任堂と『滞空女』の主人公、姜周龍の生き方を、若き日の姿から考察していきたいと思う。

1931年、平壌の小高い丘に建つ楼閣・乙密台の屋根に登り「高空籠城」と呼ばれる、高所での占拠闘争を繰り広げた姜周龍 パク・ソリョン著、萩原恵美訳三一書房刊(2020年)
 ドラマに描かれた、若き日の師任堂は伝記や評伝に書かれているものと、必ずしも一致しないが、ここではあくまでもドラマの主人公として、取り上げていく。芸術の才能にあふれ、好奇心の強い師任堂はかねてより鑑賞したいと思っていた金剛山図を見て、自分もぜひ一度、本物の金剛山を見てみたい、描いてみたいと思うようになる。だが儒教の教えが色濃い朝鮮時代にあって、女性が遠く金剛山にまで出かけるなど、到底許されないことだった。
ここで、彼女はなぜ女性だけが許されないのか、という不満を口にする。そんな師任堂には想いを寄せあう王族、宣城君との婚礼話が出ていた。だが二人は思いもよらない政争に巻き込まれ、別れを余儀なくされてしまう。
師任堂は熱烈に慕ってくれるものの、凡庸な男のもとへと嫁ぐ。凡庸で出世に縁のない男なら、二度とこうした事態には陥らないだろうという父の考えだった。
自由に絵を描き、愛する人との幸せな未来を夢見た少女は家事と育児に明け暮れる。だが胸の中にしまった芸術を愛する心が、霧散したわけではなかった。それがいずれ、波乱を呼ぶことになるのだが。

『滞空女』の姜周龍の家はかつては大店だったが今は落ちぶれている。数え二十歳でまだ結婚できない周龍に両親は焦りを隠せない。そんな彼女のもとに、代々官職を歴任したという、名門、崔氏の坊ちゃんとの婚礼話が舞い込む。まだ十五歳だというのに、結婚を急ぐ先方を不審に思いつつ、渡りに船とばかりに周龍はまだあどけなさの残る少年、全斌に嫁がされる。
実は名門とは名ばかりで、すでに落ちぶれたというのに、いまだに威張り散らす義祖母が目を光らせる婚家で、器用で頭の回転の速い周龍はくるくるとよく働いた。そんな周龍に、全斌は独立軍に志願すると告げる。この結婚は全斌のその決意を思い止まらせるための苦肉の策だったのだ。
ところが周龍は夫がその決意なら、自分もそれに従わなければと、夫唱婦随という儒教の教えそのままに、夫とともに独立軍に加わるのである。
必死の思いで独立軍にやって来た周龍の前に、どんと置かれたのはとうもろこしの山。ここでも彼女の仕事は家事だった。女に求めるのは飯炊きで、同志じゃないのかと白狂雲将軍に噛み付きながらもバリバリ働く彼女に、ついに活躍の場がやってくる。
ひょんなことから独立軍に大貢献した周龍は同志として拍手を浴びるが、それはやはり波乱を呼ぶことになるのだった。

 青嶋昌子 ライター、翻訳家。著書に『永遠の春のワルツ』(TOKIMEKIパブリッシング)、翻訳書に『師任堂のすべて』(キネマ旬報社)ほか。


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