【BOOK】『オリオンと林檎』(朴花城ほか 著/李聖和ほか 訳)

植民地下の1930年代を背景に8人の作家が描く独自の世界
日付: 2021年11月17日 00時00分

 一冊の本の中に広がる世界はとてつもなく深く広かった。1930年代に活躍した8人の作家によって作り出される八つの物語は、1世紀近い現在に生きる私たちに原風景のような懐かしさをもたらす一方で、とても新鮮な感覚にも浸れる。
標題になっている『オリオンと林檎』は、日本人女性のナオミと真っ赤な林檎が強烈な印象を残す作品だ。作者の李孝石を『そばの花の咲くころ』(1995年翻訳出版・新幹社)で知っている読者なら、作家の別の顔を見て驚くかもしれない。また、『模範耕作生』は巻末の解説に農村小説で有名な朴栄濬のデビュー作だと紹介されている。どことなくイソップ物語を連想させる寓話のようにも感じられた。映画『寄生虫』のポン・ジュノ監督の祖父である朴泰遠の短編『芳蘭荘の主』には、段落や文章を区切る句点が一切ない。一つの文章が9ページに及ぶという、画期的な試みだ。
この時代は文学史的に「プロレタリア文学とモダニズム文学との相克の時代」とされている。しかし本書に収められた個々の作品に、そのフレームはあえて必要ないかもしれない。新しい発見が大いにある作品集だ。
書肆侃侃房刊
定価=2530円(税込)


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