脱北者が北韓政府に損害賠償を求めた訴訟について6日、弁護士・福田健治氏と原告の1人である川崎栄子さんは日本外国人特派員協会で記者会見を行った。
北送事業をめぐり、日本で暮らす脱北者5人が、北韓政府に各1億円の損害賠償を求めた訴訟が提訴から3年を経て、10月14日に第1回口頭弁論が開かれる。今回の会見では、福田弁護士から訴訟内容ついて、川崎さんから被害の実態などが語られた。
川崎さんは在日朝鮮人2世。1960年に北送事業で単身、北韓に渡り、2003年に脱北した。今も子供と孫を北韓国内に残す。一昨年の11月までは家族が中国国境付近まで来て通話をすることができた。コロナウイルスの感染が拡大して以降は連絡は途絶え、物品を郵送しても届かずに返送されるようになったという。現在、安否の確認はとれないと話した。
提訴当時、問題視されたのが「主権免除」の原則。国家に対しては通常、別の国家の裁判権が及ばない。原告側は「日本は北韓を国家と承認しておらず該当しない」と主張。
3年にわたって地裁と原告との間で協議が行われ、8月16日に「北朝鮮帰国事業損害賠償請求事件 被告人・朝鮮民主主義人民共和国 代表国務委員会委員長 金正恩」とした「公示送達」が出され、口頭弁論が行われることが決定。北韓政府への公示送達が行われるのは初めてだという。
今回のケースでは、被告である北韓・金正恩は、答弁書を出さず、かつ口頭弁論にも出席しないと考えられる。だが、だからといって、原告の主張が認められるということにはならず、原告としては着実に立証をしていく必要がある。