【BOOK】「僕だって、大丈夫じゃない」(キム・シヨン・著/岡崎暢子・訳)

救急医療の最前線から田舎の診療所へ 平凡で温かい日常をユーモラスに綴る
日付: 2021年07月21日 00時00分

 まるで良質なホームドラマを見ているように、始めから終わりまで楽しい本だ。著者からは「いや大変です。本当に、大丈夫じゃないです」と異議を唱えられそうではあるが。
医大を卒業後、救急医療の最前線にいた著者は、とある縁でありふれた町の診療所を運営することになった。患者さんはお年寄りがほとんどで、問診は大音量でのシャウト、筆談、ボディランゲージを駆使して行われる。医師の疲労度合いは半端ではない。通院するお年寄りからしてみても、この診療所は決してラクではない。古い低層ビルの2階にあるため、エレベーターではなく階段を上らないとたどり着けない。診療所のドアを開けて入ってくるときの第一声は「アイタタタタ…」で、ああこれは日本でも同じだなと、さらに引き込まれていく。
医療現場といっても環境が全く違うところから来た先生は、勝手がわからず言葉選びに失敗することも、対応が間違ってしまうこともある。それでも「僕は今も未熟者だし、だからこそ、もっと学ばなければならない」と前向きだ。
笑ったり、泣いたり、感動したり、そうこうしているうちに最終ページにきてしまった。もっと続きが読みたい。
キネマ旬報社刊
定価=1650円(税込)


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