朴正煕大統領は18日の夕方、ジョンソン大統領とワシントンの要人たちをメイフラワーホテルに招待してレセプションを開いた。その後、レセプションが終わるや、韓国大使館に戻り、夜9時から韓国人たちのための晩餐会を主宰した。当時、米国内の韓国国籍者は1万2643人で、4233人が留学生だった。
朴大統領は、晩餐辞で誓った。「私たちも必ず豊かになりましょう。二度と他国に期待したり、物乞いをしないという、血を吐く思いの決心の中で憤然として働いています。(中略)必ずや歴史が私たちに付与した使命を成し遂げてこそ、私たちの子孫に栄光のある祖国を引き継げるでしょう」
米国政府は、朴大統領に最高の礼遇と歓待をした。5月19日、朴大統領一行は、ホワイトハウスでハンフリー副大統領に見送られながら、アンドリュー空軍基地から特別機でニューヨークに向かった。ニューヨークのケネディ空港に到着した朴大統領一行は、モーターサイクル20台の警護を受けながら市内に入った。ブロードウェイを通る25分間のカーパレードは、高層ビルから降り注ぐ五色の紙が雪のように舞う中で行われた。演出された歓迎だったが、朴大統領は気分が良かった。
翌日(20日)、朴大統領はニューヨークで開かれていた世界博覧会場を訪問した。朴大統領は、韓国館を見まわして考え込んだ。韓米財団が主催した昼食会には、マッカーサー将軍の未亡人、小説家のパール・バック女史なども出席した。朴大統領は国連本部を訪問、ウ・タント事務総長と面談した直後、「韓国の国連加盟が実現されないという不条理の持続状態は遺憾で不幸なことだ」という声明を発表した。朴大統領一行は、国連総会場を参観した。
朴大統領は翌日(21日)、ニューヨークから車で二時間の距離にあるウェストポイント陸軍士官学校を、米空軍の特別機で訪問した。満州、日本、韓国の士官学校を卒業し、軍事文化に慣れている朴大統領は、この訪問を非常に楽しんだ。儀仗隊の査閲を受けた朴大統領は、生徒たちの前で短い演説をした。
「歴史上、同じ時代に対等な武力が登場し、戦争をすることがよく見られます。どちらかの武力が一時的に強くても正義を伴わない武力は、結局は凄惨に敗亡しました。この真理を否定し、ひたすら暴力だけで人類を制圧できると信じる愚かな者がまさに共産主義者たちです。暴力は、自らも否定し得る暴力までを内包しているのです。このような面においても、韓国国民が続けている反共闘争は、終局的には勝利するという自信を持ちます」
生徒食堂で生徒たちと一緒にした食事が終わる頃、学校当局は、この陸士を訪問する国家元首にのみ与える特権の一つを朴大統領に差上げると言った。
朴大統領は午前中、運動場を視察中に約20人の士官生徒たちが罰として特別訓練を受けているのを目撃したことを思い出した。朴大統領はそのとき、罰を受けていたある生徒に質問もした。
「私は、私に与えられた特権をもって今、校庭で罰を受けている生徒たちを全員赦免します」
生徒たちは、食卓を叩きながら一斉に歓声を上げた。生徒たちは、朴大統領がウェストポイントを離れるとき、帽子を一斉に空高く投げて見送った。
朴大統領は数日後、同行した東洋通信の金聖鎮特派員(後に、青瓦台のスポークスマンと文化公報部長官を歴任)に訪米の感想を語った。
(つづく)