キスン便り(第41回) 韓国と日本の相違26 在日と韓国

日付: 2021年06月23日 00時00分

 韓国と日本の違いを見てきました。多くの人がこんなにも違うのか、と驚いたことでしょう。韓国人の見た目は日本人と変わりませんからね。在日は日本的価値観が通用すると思ってしまいますが、現実にはこれだけ違います。
一世はよく「お前たちは韓国に行ったら一秒も生きていられない」などと言っていましたが、全くその通りだと思います。実際、韓国に投資した一世の多くは丸裸にされてしまいました。私の父親は、投資はしなかったけれど出来の悪い弟になんだかんだとたかられて、借金までして一千万円ぐらい注ぎ込みました。物価水準を考えるなら一億円です。
多くの在日は、日本の法律も韓国の法律も無視してハンドキャリーで韓国に日本円を運び、親戚の名前で会社を興しました。自分の名前で事業をした人たちも、親戚に勝手に名義を書き換えられて全財産を失いました。まあ、自業自得です。一世は二世に韓国で自動的に金が稼げる仕組みを作って引き渡そうとしましたが、しかし二世の多くは頭の中が日本語で出来上がっていますから、韓国に行くとあたかも自分が日本人ででもあるかのようにふるまって韓国を下に見ていました。日本に対する韓国人コンプレックスを、韓国に対して憂さ晴らししていたような感じです。
多くの在日は言葉ができず、金の匂いを嗅ぎつけてやってきた親戚と付き合うしかありませんでした。しかし彼らは韓国人自身からも嫌われている五パーセントの唾棄すべき韓国人たちでした。これでは韓国が好きになりようがありません。一世は長年日本に住んでいたせいで日本的価値観で韓国を見、二世は完全な日本人として韓国を見下していたので、その結果、韓国に投資した財産の全てを失うということになってしまいました。そんなこともあり韓国を非難する在日は多いと感じます。彼らは「どうして韓国人は」という言い方をします。その前提として日本は正しく、韓国は間違っているという発想があります。文化について「なぜか」は言えますが、日本を基準にして「良い悪い」を言うのは間違いです。歴史や地理的条件が違うのですから、比較することしか出来ません。
さて、私が韓国に居た頃、百家族ぐらいが韓国で事業をしていました。皆法律を守って韓国に投資をし、韓国の大学に行くなどして言葉をマスターした人たちでした。彼らは信頼できる韓国人と付き合い、事業を順調に運営していました。
韓国人は基本的には優しい人たちです。困ったことがあったら助けてくれます。チングでなくても、正論を吐き、論破できるなら、こちらの味方になってくれます。詳しくは書きませんが在日を差別的に取り扱う法律があり、私が不利益を被る局面に立たされたことがありました。私は関連する条文を見せて貰い、この規程は憲法違反だ、なんとなれば、と丸一日かけて在日の歴史を話しました。そして「韓国政府は在日に、日本に土下座しろと言うのか!」と迫りました。その日の夜に担当者は上と相談したんでしょうね、翌日になると「この法律は間違っています。先生の方が正しい」といって、何とその法律を無視してしまいました。
日本の常識では、現場が法律そのものの違憲性を解釈するなどということは絶対にあり得ないことです。それが出来るのは裁判官だけです。しかし韓国ではそれが起こります。法治国家とはいえないと感じる一方で、正義って勝つんだ、と知りました。日本なら「悪法も法です」で終わりですからね。韓国では正論を吐き、目の前の担当者や上司を説得できるなら、勝てる社会なんだと知りました。これだからチングが必要なんだな、とも思いました。屁理屈でもチングが居れば通せちゃいますからね。実際、世の中にはそっちの方が多いでしょう。国民性を変えるのは簡単ではないと思ったことです。

李起昇 小説家、公認会計士。著書に、小説『チンダルレ』『鬼神たちの祝祭』『泣く女』、古代史研究書『日本は韓国だったのか』(いずれもフィールドワイ刊)がある。


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