菅総理が金正恩に条件なしに会いたいと語った。はたしてこれは現実的な提案と言えるか。仮に日本当局と平壌側で非公式の接触があったとしても、客観的な動きや流れから、金正恩の置かれた立場を見れば、平壌側は今、日本側と会う理由も、日本と拉致問題などを相談する余裕などない。
まず、金正恩は労働党第6次秘書大会で、人民に「艱苦・苦難の行軍」を求めた。金正恩としては、国際社会の圧迫に対し住民を犠牲にしてもう少し辛抱すれば、核強国として認められると判断するはずだ。
北側は極度の物資欠乏状態だが、SLBM発射の3000トン級原子力潜水艦を作ると宣伝する。もちろん、核潜水艦を建造する材料も技術もないため虚勢だ。中共が材料と技術を提供すれば、できるだろうが、その可能性は低い。
一方、すでに金正恩への期待を完全に捨てた平壌のエリートたちも、日本との関係改善などに介入したくないはずだ。いつどう粛清されるかもわからない状況で、余計な冒険に命をかける必要がない。外から北の事情を知るのは難しいが、最近、平壌に金正恩の痕跡を消す行動と解釈される異常事態が見られるという。つまり「元帥に従って天地の果てまで!」のスローガンを「党中央に従い千万里!」に変えたというものだ。
金正恩が踏ん張るのは、米国との対決を宣言した中共が背後にあり、北韓への情報流入を遮断するため南北交流協力法改正案を国会に出した骨髄主思派の李仁栄が首長の韓国統一部が、最後まで自分を支えると考えているからだ。この文在寅政権がある限り、金正恩は拉致日本人を返すための接触をする必要がない。結論的に、菅総理の提案は、国内政治用の意味しかないのではないだろうか。