キスン便り(第36回) 韓国と日本の相違21 歴史は繰り返す

日付: 2021年03月31日 00時00分

 韓日両国とも歴史認識を改める必要があると思います。ただ日本の場合はアメリカに平和憲法を強制された結果、将来失敗しないような器ができあがっているので、歴史認識が間違っていても過去と同じ失敗を繰り返す可能性は低いでしょう。
日本の最大の間違いは武官が政治を主導できる仕組みを作ったという点にあります。それで成績だけ良い馬鹿者たちが組織を破壊し、国家までも破壊しました。日本は反省してないけれど平和憲法が過去の間違いを繰り返さないような仕組みになっているので、大丈夫でしょう。ただ突発的な事件を切っ掛けに武官が政治を握る可能性がないわけではありません。その可能性を排除するには、各人の歴史認識を正す必要があります。
日本が反省すべき点は八月になると分かります。日本は八月になると途端に被害者面を始めます。世界で唯一の原爆の被害国だと己を哀れみます。朝鮮人も巻き添えになって多くが死んだのにそんなことは忘れています。日本人は余裕がなかったとはいえ、原爆で死んだ朝鮮人を野ざらしにしました。朝鮮人の死骸はカラスの餌食になりました。そんな悲惨な光景を丸木位里という画家が「原爆の図」として残しています。昔、かみさんがこの絵の前で鎮魂の舞を舞ったことがありました。韓国から来た若い数人の学生が、絵の解説を聞いて顔面蒼白、絶句したことを思い出します。しかし日本人がそれを残したというのは、立派なことだったと思います。
八月。日本人は自分たちだけが戦争の被害者だったかのように振る舞います。馬鹿な軍人が暴走したお陰で、アジア太平洋地域では、少ない推計で一千万。通常は三千万。多い推計だと五千万にも及ぶ人たちが死んだといわれています。日本人だけの被害者は三百十万といわれていますから、その三倍から十倍の被害をアジア太平洋地域に及ぼしていました。この現実を前に被害者面をするのか? と言いたくなります。日本は加害者だったという立ち位置を忘れると、将来武官に政権を握られる愚かさを繰り返すかも知れません。
韓国は韓国で自分たちの歴史の問題点がどこにあるのかを知りません。何か問題があると直ぐに犯人捜しを始めるという欠点を改めないと将来も同じ間違いを繰り返すでしょう。また行動の根底に難民の心がありますから、これを意識しない限り、「ケンチャナヨ」「パルリ、パルリ」などという、目の前の困難さえ乗り切れば何とかなるといういい加減な性癖を直すことはできないでしょう。最大の問題点は儒教的な価値観です。韓国の儒教は孝を最上位に置いています。これは中国にも日本にもない価値観です。韓国以外では忠が最上位です。韓国式儒教は、孝、つまり目上の者が言うことは何でも聞けという価値観です。このため派閥を作り、自分たちの派閥さえ無事なら後は知らんという狭い考えで生きてきました。その背景には侵略が続いたという不幸な歴史があるのですが、しかしこれは意識して排除しないと世界で生き残ることは難しいでしょう。
韓国の「チング」は派閥と化しています。チングは互いの給料の額からパンツの色まで知っています。女房と子供以外は共有するのが「チング」だといっても良いでしょう。そうやって自分の利益を守ろうとするから、法を犯した者までかばってやることになり、結果として弱い者いじめをしてしまいます。
こうした欠点を意識して排除するためには、公務員を絶対に公平な組織に作り替えなければなりません。生活できるだけのまともな報酬を出し、その代わり一度でも賄賂を受け取ったなら、懲戒免職にします。学校の先生が賄賂を受け取るのも論外です。先生という未来を作る職業が賄賂で左右されるようでは国の未来はありません。韓国の改革は百年単位の時間がかかるでしょう。 

李起昇 小説家、公認会計士。著書に、小説『チンダルレ』『鬼神たちの祝祭』、古代史研究書『日本は韓国だったのか』(いずれもフィールドワイ刊)がある。


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