キスン便り(第34回) 韓国と日本の相違19 日本が反省すべき点

日付: 2021年02月25日 00時00分

 日本人の歴史認識と韓国人の歴史認識で決定的にずれている部分を書きます。二つあります。この二つを韓国人は常識として知っていますが、多くの日本人は全く知りません。
一つは閔妃暗殺(一八九五年)です。閔妃というのは高宗の奥さんでした。日本的に言うなら皇后です。高宗というのは李王朝の第二六代の王で、在位は一八六三~一八九七年です。その後大韓帝国皇帝と成って一九〇七年まで在位します。閔妃は宮廷に乱入した日本人に宮廷の庭に引きずり出されて斬り殺され、ガソリンをかけて燃やされました。致命傷を与えたのは韓国人の武官でしたが、韓国人は日本人が殺して燃やしたと思っています。
韓国は土葬の国ですから、火葬をすると魂の戻る場所がなくなります。ガソリンをかけて燃やしたというのは、死後の世界の安眠まで奪ったという意味があります。火葬の国・日本とは認識が全く異なります。
私自身は事態をそこまで持って行かせた韓国文化を反省すべきだと思っています。当時、韓国には軍隊と呼べるものは近衛兵ぐらいしかいませんでした。兵役簿はあったし、そこに人名は書かれていましたが、多くの者は賄賂を渡して兵役を免れていました。将軍だけいて兵はいない、という状態です。頼りになるのは近衛兵ぐらいです。しかし閔妃の一族は私腹を肥やすために給与として渡す米の一部を横流しし、かさを増すために砂を混ぜたりしたので士気は落ち、閔氏一族に恨みを抱いていました。閔氏一族はロシアを後ろ盾として派閥の利益を確保しようとし、若手官僚は日本を後ろ盾として自分たちの派閥の利益を拡大させようとしていました。公や正義を叫びながら、皆は自分たちの利益のためだけに戦いました。この文化が韓国を滅ぼした、と韓国人自身は認識していません。日本人が国母を殺した、それは日本を例に喩えるなら、韓国人が皇居に乱入して皇后様を斬り殺し、庭でガソリンをかけて燃やした、ということになります。そうなれば日本人は韓国人を恨むでしょ? 同じことです。韓国人は自分を反省しないで、日本人を恨みます。王宮に日本軍や警察が簡単に入れるような兵隊しかいなかった、国を守る兵がいなかったという、そのような事態がなぜ引き起こされたのか、という反省の仕方はしません。悪いのは日本だ、で終わりです。
日本に対して言いたいのは、できるということと、して良いこととは次元が異なるということです。閔妃を暗殺できる状態であっても、それはしてはいけないことでした。韓国がどれだけ隙だらけの状態であっても、それは、してはいけないことでした。この論理構造は、アメリカが原爆を持っていたということと、それを日本に対して使ったというのと全く同じです。出来るから何をしても良いということにはなりません。日本は韓国に対し、しては成らないことをしたのです。
あと一つは言葉の抹殺です。私が中学生の時「最後の授業」という、フランス語を明日から使えなくなるという小説が国語の教科書に載っていました。私はそれを読んで周りの日本人が不思議でした。お前らも韓国に対して全く同じことをしたのに、そんなことをしたことがないかのようにフランス人に共感し、ナチスを憎んでいる。東洋で唯一、ナチスと同盟を結んだのは日本だけだったという事実を忘れている。こいつら一体何なんだ、ともの凄く違和感を感じたことを覚えています。「最後の授業」に感激するのなら、自分たちも当時の朝鮮に対して同じことをしたという歴史を認識すべきだと思いました。
私が韓国史を習った先生は、子供のころ学校で韓国語を使うと、罰カードを友達から渡されたそうです。ホームルームでそのカードが多い者は日本人の先生から罰せられます。日本はそうやって韓国人から言葉を奪おうとしました。原爆投下を非難するのなら、同じ理屈で日本は自省すべきだと思います。

李起昇 小説家、公認会計士。著書に、小説『チンダルレ』『鬼神たちの祝祭』、古代史研究書『日本は韓国だったのか』(いずれもフィールドワイ刊)がある。


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