韓日をつなぐクリエイター それぞれの分野で未来に向け

日付: 2021年01月01日 00時00分

 今日、技術の進化によってさまざまな情報へのアクセス方法が細分化する時代となった。こうした状況の中では、自ら情報を収集・発信し、コンテンツを作成することがますます重要になる。新年を迎えるにあたり、未来に向けた韓日の懸け橋となる人物にインタビューした。

△韓国語アプリ「できちゃった韓国語」を企画・制作するほか、Facebook最大の在日韓国人コミュニティ「日本韓国人会」の管理人も務める。
◆韓国語学習アプリを開発
「できちゃった韓国語」開発者・朴鍾暁

 どのようなきっかけでアプリ制作を始めたのか。

 朴 日本で韓国語を教えてきた経験がベースとなっている。最初に来日したときは東京・新大久保で韓国語を教えていた。その後はゲーム業界に就職しつつも企業・個人レッスンという形で韓国語を教えていたのだが、「学校が遠い」「費用が高い」という理由で、学びたくても学べない人や、独学で勉強している人がたくさんいることに気がついたことがきっかけとなった。

 「できちゃった韓国語」(でき韓)はどのようなアプリなのか。

 朴 当時はゲームアプリ制作をやっていたので、「時代はYouTubeとスマホアプリだ」という思いがあった。韓国語を手軽に学べるアプリを探したところ、意外にもなかったので、自分で作ろうと企画を始めたのが3年前。外からの融資や投資に頼らず、自分の貯金を切り崩して始めた。自分にはエンジニアのスキルがなかったので、これまで韓国語を教えてきた経験を生かして企画とディレクションを行った。
韓国コンテンツ振興院からエンジニアを紹介してもらって、会社勤めをしながら2019年1月に「でき韓」をリリースした。
6年前からハングル講座のYouTubeをやっていて、「でき韓」はある意味、自分のYouTubeコンテンツを集約したものになっている。今まで投稿してきた動画と連動して、本格的に学べるように作ってある。日本語版はかなり定着していて、ユーザー数で2位(カテゴリ別)となっている。

 ビジネスとしての可能性はどのように感じているのか。

 朴 2年ほど運営してみて、現実的にはかなり厳しいと言わざるを得ない。今は広告収入だけで糊口をしのぐ状態だ。
コロナ禍による韓流ブームの再燃で、アプリのユーザー数も学習者数も増えているが、課金率・継続率に難がある。試験対策でもない限りは娯楽・趣味の範囲にとどまるためだ。
以前はアプリ内に有料コンテンツもたくさんあったが、ニーズに合わせて無料化を進めた結果、ほぼ100%無料になってしまった。アプリは作って終わりではなくて、サーバーの維持費やメンテナンス代、ユーザー対応などにコストがかかる。難しい決断を迫られた時もたくさんあった。

 以後の展望については。

 朴 海外ユーザー獲得のため、今年ベトナム語版と英語版をリリースしたが、残念ながらあまり動いていない。身も蓋もない話だが、宣伝のためには結局資金が必要なので、苦戦している。マーケティングにはバジェット(予算)が必要だ。また、この先ずっと一緒にやっていける、その言語のネイティブパートナーも必要になってくる。今後はアプリの内容をブラッシュアップしてマーケティングをかけるつもりだ。英語版とベトナム語版を定着させることがこれからの課題だと思う。

 アプリをダウンロードしている主な年齢層は。

 朴 データを見る限りでは、最も多いのが25~35歳女性、次が15~25歳の女性。つまり、20~30代の女性が圧倒的に多い。以前(第1次韓流ブーム)は『冬のソナタ』の人気から始まったため、年配の女性が韓流ファンの多くを占めた。しかし現在は、K―POPの影響で若い女性の層が急増している。

 ICT技術の教育分野での展開によって、どのような変化を予見するか。

 朴 アイデンティティーの大部分は言語だと思うので、外国で育つ韓国人の子どもたちに対する韓国語教育は非常に重要だ。
今年はコロナ禍によってオンライン教育が更に広がった。また、5G通信が始まったこともあり、こうした語学学習アプリを含めた韓国語教育コンテンツ・動画などによって更に韓国語が学びやすい環境になっていくだろう。それによって、教育の格差が縮まるのではないだろうか。
ただし、教育のデジタル化が行われたとしても、同一の言語で生活する共同体としての場があってもいいのでは、と思う。そういう意味では韓国学校は必要だと思う。

 今後どのようなコンテンツを作っていくのか。

 朴 YouTubeにしろアプリにしろ、教育内容だけだと広がらないので、どうしても娯楽的な要素が必要になる。日々いろいろなものを試しているところだ。ただ、私はあくまでも韓国語を広げる活動をやっているので、韓国語コンテンツはYouTubeとアプリで展開するつもりだ。こうしたデジタルコンテンツの発信は、韓日の懸け橋になりうると思っている。
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△1996年に来日し、00年に東京文化デザイン専門学校を卒業。現在はYouTubeで韓国の不正選挙を訴える活動を行う。韓自協女性部にも所属。
◆不正選挙をYouTubeで糾弾 
韓自協女性部・尹貞●(示へんに喜)

 どのようなきっかけで活動を始めたのか。

尹 昨年の4月に韓国で不正選挙があったことを知り、日本にその事実を知らせる活動をしているYouTuberがいないことに気がついた。最初はYouTubeなんて…と思ったが、「誰かがやらなくてはいけない」という思いもあった。ちょうどブラックデモ(韓国の4・15不正選挙などを糾弾する街頭宣伝活動)を始めたので、それを配信するにはYouTubeしかなかった。また、日本人にも「韓国で不正選挙があった」ということを知ってもらいたかった。
活動は7月から始めたので日は浅いが、おかげで登録者数は1000人を超えた。支えてくださる皆さんには本当に感謝している。

活動を始めるにあたって、アドバイスを受けた人などは。


尹 全くいない。一からすべて独学でやっている。YouTuberとして活動している知り合いもいないので、協力も難しい。他の人の動画をみて、「あれはどうやって撮っているんだろう」と考えて、試行錯誤しながらやっている。まだ分からないことばかりで勉強中だ。

活動の目的は。

尹 やはり韓国の不正選挙が明らかになることを願って活動を始めたので、それを目的としている。
私はいま日本に住んでいるので、日本でできることを在日韓国人たちと連携しながらやっていきたい。

2020年米大統領選で、YouTubeが検閲を宣言したことについてどう思うか。他の媒体に移ることは考えているか。

尹 最初にその話を聞いた時は本当に驚いた。私の動画にも米大統領選の不正選挙を訴える内容がたくさんあるし、ブラックデモの時も米国の不正選挙をずっと訴えてきた。
ただ、個人的には動画の削除はないのではないかと思っているので、今まで通りやっていくつもりだ。米国の不正選挙がすぐにでも明らかになり得る現況を、メディア側はよく理解していると思う。もしこのまま関連動画を削除すれば、トランプ大統領が再選した時に大変なことになるくらいは想像しているだろう。

この活動に対して、知り合いから反対されたことは。

尹 正直に言うと、私の身近な知り合いにはあまり活動について話していない。本当は身近な人を説得するべきなのかもしれないが、とりあえず今は同じ考え方を持つ仲間と、一生懸命やっていく段階だと思う。今まで何十年付き合っていても、この活動をしていることで離れていく人がいるのは仕方ないことだ。しかし時間が経てば「あなたが正しかった」と言ってくれると信じている。

活動に対しての反応は。

尹 もちろん応援の声は寄せられている。地方在住だったり子供が小さかったりして、ブラックデモに直接参加することまではできないという人もたくさんいる。しかし大事なのは、ブラックデモ自体は言わずもがな、それを応援して見守ってくれる人と共に頑張っているという気持ちだ。

ニューカマーにとって、民団とはどういう存在なのか?

尹 私は今まで民団と言えば、在日韓国人のためにできた団体だという意識があった。だが、今回の4・15不正選挙に関して何もせずに沈黙していることに対しては本当に失望している。民団の前で抗議デモを行ったこともあるので、私たちがこういう活動をしていることは必ず把握しているはずだが、声もかけてこない。韓国では沈黙も犯罪に同調する行為だという言葉もある。

では、いち在日韓国人としてどういうことを民団に求めるか。

尹 日本にいる韓国人はもちろん、韓国の国民がこの8カ月間、何によって苦しんでいるのかを理解した上で、今すぐにでも共に韓国の不正選挙のことを訴え、事態を明らかにするために協力してほしい。

今は不正選挙や、現政権の親中・従北への批判が動画の軸になっている。将来的にそれが必要なくなったとして、何を発信していきたいか。

尹 最初は「不正選挙が明らかになれば自分の役目は終わり」と思っていたが、活動を続けるうちにそれ以降の方が大変だと思うようになった。今はかなりの人が気づいていることだが、未だに李承晩・朴正煕大統領に対して悪感情を抱いている人もたくさんいる。そういう人に「私たちが小さい頃から受けてきた教育は間違っていた」ということを伝えて行きたい。
昨今、韓日関係が悪化しているが、私のチャンネル登録者たちからは、日本の美しい風景や回転寿司などの食文化を見たいという声が上がっている。今の情勢が解決する時が来れば、そういうコンテンツも配信していきたい。

△2000年に劇団四季歌唱クラシック部門合格。『パルレ』日本公演を機に韓国ミュージカル界で活躍。現在、韓国ミュージカル映画『英雄』(ユン・ジェギュン監督)の公開を控える。
◆ミュージカルで韓日の懸け橋に
俳優・野島 直人

 韓国との縁は何だったのか。

野島 2012年、ドラマなどの第1次韓流ブームが最盛期を少し過ぎたあたりで、韓国ミュージカルが日本に入ってきた。日本で公演された韓国の『パルレ』に出演し、「2000回記念公演に出演してみないか」という先方からの縁で、韓国ミュージカルに携わるようになった。

 コロナ禍における仕事への影響は?

野島 コロナで往来ができなくなってはいるのだが、YouTubeなどで2週間ほど毎日1作品を全編公開するという企画を行ったり、韓国観光公社からの依頼で韓国ミュージカルを月1で紹介する番組をやっていた。韓国に行けないのは残念だが、自分の土俵であるミュージカルというカテゴリの中で、交流が途絶えないように活動はしている。出演するだけでなく、インターネットを使った仕事に変化した。

 韓国ミュージカルの強みは何か。

野島 劇団四季などを含め、特に日本はライセンス契約を結んでの上演というケースが多いので、インターネット配信が難しい。対して韓国はオリジナルなので、版権元の了解を取れれば解決するという点でとても身軽だ。それによって、今までは観に行かないといけなかったものが、手元で見られるようになった。

 昨今の韓日関係に対する所感は。

野島 韓日の関係が悪くなりはじめた時期に、ちょうど『英雄』(ユン・ジェギュン監督、現在公開延期中)の撮影で、韓日を往ったり来たりしていた。日本人ということで、韓国の仲間にも「何か問題が起きたらすぐに報告しろ」と心配されたが、実際には何もなく…。
不買運動の真っただ中で知り合いに連れられて釜山観光に出かけた時、釜山駅には大きく「NO安倍」などと書かれていたが、現地の人は「日本人が来なくなって寂しい」と言っていた。報道と現実のギャップを常に感じていて正直、困惑していた。

韓国との出会いは自身に(仕事でもプライベートでも)どのような影響を及ぼしているか。


野島 『パルレ』の前は『レ・ミゼラブル』で大役をいただいたこともあって少し調子に乗っていた時期だったのだが、その時に動画を通して目にした韓国ミュージカルが圧倒的で、「謙虚に努力しよう」という気持ちになった。『パルレ』の時は通訳もなく、言葉も分からないまま単身乗り込んでいった状態。威張っていても誰も助けてくれない環境で、自分を見つめ直すいい機会になった。
また、韓国語のセリフに感情を込めるのが難しかった。韓国語で演技するためには「韓国の観客と俳優の気持ちを理解する」ことが重要だと感じ、分からないことは素直に聞く姿勢が身に着いた。言葉が通じないからこそ、韓国人の本当の温かさに触れられたと思う。

在日韓国人という存在をどのように捉えているか、どのような気持ちを抱いているか。


野島 仕事柄、こういった問題には早くからぶつかっていた。日本だから・在日だから・韓国だからという概念は、かなり早い段階でなくなっていたと思う。国籍に関係なく、困っていれば助けてあげるのは人として当然のことだ。

野島さんの活動のモチベーションになっているのはどういう思いなのか。


野島 韓国はエンターテインメントに力を入れている国なので、そういった最先端で勝負したいという気持ちがある。エンターテインメント先進国でやり続けたいと思い、韓国で活躍するには何が必要か考えるようになった。レベルが高い国で自分がやりたいと思えることをできることそのものが、モチベーションになっている。

 これから、どのようなコンテンツを発信していくのか。

野島 最近、いろいろな所からの依頼で行っている韓国ミュージカルの紹介などに携わるうち、見る側の人の意識と、コンテンツを発信していく側の意識に大きな壁を感じるようになった。しかしまずは、自分に出来る範囲から「親しみやすさ」に重きを置いて活動していきたいと思っている。

 


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