「在日同胞の母国貢献 伝えるべき」

本紙、学術会議をソウル大学と共同開催 教科書掲載についても議論
日付: 2020年12月28日 00時00分

 本紙・統一日報は昨年12月16日、ソウル大学構内の湖厳教授会館で、在日同胞たちによる母国貢献をテーマとする学術会議を開いた。会議はソウル大教育総合研究院との共催で、韓国教科書の編纂に携わった歴史専攻教授、母国滞在の在日同胞、元駐日公館の公務員、在外同胞専門メディアなどが参加し、熱い議論を繰り広げた。この日交わされた討論の中から、ポイントとなる部分を紹介する。(ソウル=李民晧)

韓国社会に変化をもたらした在日同胞

 在日同胞の低評価 根底に「日本否定論」

本紙は昨年12月16日、ソウル大学と共同で「在日同胞の母国貢献」をテーマとする学術会議を開いた。母国・韓国で本テーマをメインとする学術会議開催は初めて。
 この日は「在日同胞が変えた大韓民国の歴史とその評価」をテーマに、本紙ソウル支社長を務める筆者が登壇・発表した。筆者は、新韓銀行を創立した在日同胞のリーダー・李熙健氏と、韓国産業の礎を築いた徐甲虎氏から見た在日同胞の母国貢献と彼らの挫折について、実際の事象を提示しながら解説した。根拠となる資料は、政府保有の在日同胞勲褒章記録、当事者の遺族と会社関係者の証言・記録などだ。
筆者はまた、韓国社会に変化をもたらした在日同胞たちによる実際の貢献事例の数々と、その付加価値を分析した。
日帝時代に渡日した在日同胞1世・李熙健氏と徐甲虎氏は共に母国投資を行い、韓国の金融業と繊維産業の発展をけん引した人物だ。
李熙健氏(1917~2011)は、民族系金融機関「大阪興銀」に続き、韓国で「新韓銀行」の創立をリードした人物だ。オリンピックやエキスポといった韓日両国に関わるビッグイベントのたびに両国を支援するキャンペーンを展開した在日リーダーだった。
日本で紡績王と呼ばれた徐甲虎氏(1914~1976)は60年代、韓国に大型の外国資本投資と母国への財産搬入を実施した先駆者だ。さらに徐氏は1962年、東京に駐日韓国大使館の土地を寄贈。これが呼び水となり、日本国内10カ所の韓国公館のうち9カ所が在日同胞の寄贈によって建てられた。
2人に代表されるように、韓国社会の発展において在日同胞たちの貢献は無数に存在するが、そうした彼らに対する母国での評価は総じて低い。その原因について、筆者は「今もなお、在日同胞を『我流日本人』『日本の手先』などとする否定的感情が大きく作用しているため」と分析する。


 在日同胞という「スカーレット・レター」

登壇したパネラーたちもこれに共感を示し、小中高校の教科書に在日同胞に関する記述がないことは「問題である」と指摘した。
近現代史を専攻する金泰雄・ソウル大歴史教育科教授は「歴代政権が政治的功績を示すため、意図的に排除したという疑念がある。教科書の高度経済成長の項目では、政府の指導力は高く評価する一方で、在日同胞による貢献は1文字たりとも記載されていない。これは必ず是正すべき部分だ」と述べた。
同大のドイツ語教育科クォン・オヒョン教授は「2000年代以降は『多文化』と『世界市民』がビッグイシューとして登場するものの、教科書からは『在外同胞』のフレーズが消えてしまった。在外同胞を韓半島周辺に暮らす民族構成員とみる視点が抜け落ちており、世界共同体を示す韓民族の核心的構成員として、韓国社会とは文化的・情緒的に特別な結束をもつグループとして捉える観点が重要」と指摘した。
金雄基・翰林大日本学研究所教授は「大韓民国では在日同胞という名詞がスカーレット・レター※となりがちだ。自身を日本人だと思ったことのない徐甲虎氏、李熙健氏に対する韓国社会の認識もまた矛盾そのもの」と指摘した。
徐甲虎氏については、70年代に親会社の阪本紡績(日本)が倒産すると、各韓国メディアは「毎食寿司とみそ汁を食す日本人・阪本」という悪意を帯びた表現で報じた。韓国の教科書には昨年から「在日同胞の詩人・尹東柱」との記述が登場したが、青瓦台の国民請願には「在外同胞」という記述の削除を求める請願が提起されるなどの反発が起きた。

教科書への記載は必須


姜聲喆・連合ニュース在外同胞専門記者は「在日同胞と在米同胞に対し、韓国社会の見方はダブルスタンダードだ。同胞が居住国の国籍に変えた場合、在米同胞に対しては『成功者』、在日同胞に対しては『恥ずべき人物』とみなす傾向があるのが現実。在日同胞による母国貢献は教科書に記載すべき事案だ。同時に、イスラエルがすべての海外在住ユダヤ人に対して行っている『母国訪問支援プログラム』も導入する必要がある」と語った。
教科書の編纂に携わった経験がある金泰雄教授は「韓国の教育現場では、多文化や移住労働者の人権と共同体問題を強調する半面、海外に定着してその国の文化、歴史、言語を持つ同胞たちを逆差別する結果となった。民族の受難と抵抗に重点を置く教育課程によって、在日同胞の成長と祖国への貢献という肯定的な部分が粗雑になった」と語った。金教授は「韓国近現代史で在日同胞の貢献を公正に伝える必要がある」と加えた。

 在日同胞子孫の証言

この日の会議には、母国貢献を行った在日同胞の子孫たちも討論に参加した。李熙健氏の内孫かつ徐甲虎氏の外孫である李薫・李熙健韓日交流財団顧問は、2人の祖父に関するエピソードを紹介した。
李顧問は、李熙健氏の世界観について「5大洋6大陸のオリンピックとエキスポを1人で見て回ることを大変好んでいた。祖父が持つ国際感覚と広い視野は、オリンピックという世界の”窓”を通して得たのだと思う」と語った。実際、李熙健氏の国際感覚とコミュニケーション能力は、在日同胞社会と韓日関係における複数のシーンで李氏が重要な役割を果たす上での原動力となった。
朴炳憲・元民団中央本部団長の次男、朴相圭・在日韓国人本国会会長も参加し、生前のエピソードを披露した。朴元団長は6・25学徒義勇軍に参戦後、九老工団の入居企業への投資、88ソウルオリンピックの募金運動などに直接関与した「民団マン」だった。
本紙とソウル大教育総合研究院が共催し、在日同胞財団が後援したこの日の学術会議は、新型コロナウイルスの感染対策として必要最少限の人数(約30人)で行われた。  
会議の司会は朴平植・研究院院長、基調講演は李求弘・海外矯胞問題研究所理事長、祝辞は金星坤・在外同胞財団理事長と呂健二・在日大韓民国民団中央団長(代読)が行った。
登壇したパネリストは以下の通り。

・クォン・オヒョン・ソウル大教授
・金泰雄・ソウル大教授
・金雄基・翰林大教授
・李光衡・前駐日大使館首席教育官
・李薫・李熙健韓日交流財団顧問
・権鎔大・前アシアナ航空日本本部長
・朴相圭・在日韓国人本国会会長
・姜聲喆・連合ニュース記者
※スカーレット・レター=ナサニエル・ホーソーンの小説『緋文字』を原作とした映画。濡れ衣を着せられた移民が主人公。


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