【BOOK】『失花』(李箱、李孝石ほか著/オ・ファスンほか訳)

1940年代を代表する作家たちによるさまざまな人間模様を綴る中短編集
日付: 2020年11月18日 00時00分

 本書は、日本統治時代の1940年前後に発表された中編・短編小説集だ。李箱、李孝石、蔡萬植、金南天、李無影、池河蓮という、その時代を代表する顔ぶれが個性をいかんなく発揮している。表題となっている李箱の『失花』は、余計な部分をそぎ落とした鋭利な表現が深部までえぐるようであるし、李無影の『土の奴隷』では、節くれだった手の感触が最後まで消えない。
そのなかで、強烈なオーラを放つのが、それぞれの作品の中に登場する女性たちだ。主人公に「媚態の天才」と言わしめる妍、キタイスカヤのショーガール・ユーラ、京城にやってきた日本人女性・原澄子、結婚を決めた男の面倒をかいがいしく見てきたが結局は一人になる崔武卿、女性の豊潤さを失わない武卿の母、妻の親友などなど。奔放であったり、思慮深かったり、情熱的であったり、ときとして男性には理解不能に見えるだろう。現代小説に登場する女性とは一味違う魅力を堪能できる作品集だ。
巻末の「文学史年表」には、40年代半ばまでの歴史上の主な出来事とともに、韓日で出版された作品がまとめられている。秋の夜長、韓日作家の読み比べも面白い。
書肆侃侃房刊
2400円(税別)


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