大韓民国の建国史(212)民政移譲に向けて最終的に共和党を選択した朴正煕

日付: 2020年10月21日 00時00分

 金鍾泌が全力を注いで作った共和党は、内外の挑戦に直面し、むしろ内部団結と改革に拍車をかけた。事務局や有給スタッフを4分の1に減らし、全国的に党員確保運動を展開して成果を上げていた。
金鍾泌が外遊で不在のなか、5月末、共和党を導いてきた鄭求瑛総裁と尹致暎議長は、朴正煕議長を訪ね、共和党と汎国民政党の中で選択を要求した。すでに金在春情報部長が推進してきた汎国民政党運動に懐疑を感じていた朴正煕は、どうしましょうかと反問した。
両人は朴正煕に、「”鄭求瑛総裁と面談した席で、私が信じている政党は民主共和党だけだ。さらに党勢拡大に力を入れて有終の美をおさめるようと言った”としてほしい」とを要請した。最高会議の李厚洛公報室長は、「私は信じている政党は民主共和党だけ」という部分を除いて発表した。金在春情報部長は記者団に、鄭求瑛総裁の訪問に対しての朴議長の儀礼的な反応にすぎないと言った。
ところが、共和党は5月27日開催した第2次党大会で、代議員たちが突発的に朴正煕議長を大統領候補に指名し、これを朴議長に通告した。朴正煕は受諾する意向はあるが、必要な手順があるため時間的な余裕が欲しいと言ったが、共和党は朴正煕の選択を既成事実とした。
汎国民政党推進勢力も6月10日、発起準備大会を開き、14日には党名を日本の与党と同じ自由民主党に決めた。しかし、発起準備委員は一つの政党を構成できる面々ではなかった。イデオロギーや組織的な哲学など期待できない、日和見主義的な人物が集まった印象を国民に与えた。
朴正煕議長が共和党を選択せざるを得なかったのは、金鍾泌が1年近く先に組織してきた共和党が全国的に「祖国近代化」という理念を共有した政治集団となっていたからだ。しかも、証券市場操作で確保した資金があった。金鍾泌が悪役を自認して作った共和党は、「5月同志会」や自民党に比べて理念や人材、資金面で優れていた。そのため金鍾泌が外国をさまよったときも危機を突破できた。
朴正煕議長は共和党と汎国民政党(自民党)、5月同志会を競争させて力量をテストし、7月4日、自民党に共和党と統合するように指示した。すでに圧倒的に優位だった共和党は、対等な統合を拒否、自民党員が個別に入党するよう要求した。自民党内の親共和党派と自民党残留派が分裂した。
朴正煕は7月12日、汎国民政党結成を指揮してきた金在春情報部長を無任所長官に任命し、後任の中央情報部長に親金鍾泌共和党路線の金炯旭最高委員を任命した。朴正煕議長は、軍隊と共和党と中央情報部を朴正煕・金鍾泌ラインで整備して民政移譲への選挙制度を整えた。
朴正煕議長が選挙体制に権力構造を再編成するや、朴正煕と金鍾泌を分離させ、可能な限り民間人たちが政権を握るように工作してきたサミュアル・バーガー駐韓米国大使は慌てた。彼は7月15日、国務省へ総合分析および対策を建議する秘密電文を送った。バーガー大使は、朴正煕の一連の措置によって外遊中の金鍾泌が早期帰国する可能性があり、親共前歴の人物の影響力が強化される危険性があると指摘した。
バーガー大使は、電文で、「私たちは反対勢力と密接に協力する必要がある。(中略)これは奇襲的に現政府を転覆させるための目的ではなく、状況の変化によって軍事政権に代わる勢力が必要なときに備えて反対勢力を作るべき」ということだった。
(つづく)


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