大韓民国の建国史(207)民政移譲問題をめぐる朴正煕と米国の張り合い

日付: 2020年09月09日 00時00分

 翌日、金顯哲内閣首班は、バーガー駐韓大使を呼び、クーデター陰謀と暗殺謀議が摘発された状況などを説明した。驚いたバーガー大使は、メロイ米8軍司令官を訪ねた。そこには金鐘五参謀総長が来ていた。バーガー大使は、クーデターは混乱を助長して朴正煕議長の民政不参加宣言を覆すために操作されたようだという意見を述べ、朴炳権国防長官と3軍参謀総長らも金鍾泌勢力によって粛清されるかも知れないと金鐘五参謀総長が事態に介入するよう促した。
朴正熙はこの日、体調が悪いと出勤せず、議長公館で仕事をした。 朴正煕は金容珣内務委員長と金煕徳外務国防委員長を公館に呼んだ。最高会議では洪鍾哲文教社会委員長と金炯旭運営企画委員長が、吉在號、玉昌鎬最高委員と会った。皆、金鍾泌系列の核心だった。この夜、洪鍾哲と金炯旭は朴議長公館を訪れ、長時間密談したという。
3月15日、最高会議ビルの前で最高会議に派遣された将校と下士官が「国防長官は退け」「軍政を延長せよ」「戒厳令を宣言せよ」などを主張し示威をした。参加者全員は憲兵隊に連行された。この前代未聞の軍人示威は、最高会議議長の警護責任者の朴鐘圭が組織したという。朴議長はクーデター陰謀と軍人デモ、与野党の政争を同時に非難する声明を発表した。
サミュエル・バーガー大使は15日、朴正煕議長をはじめ、韓国政府の要人たちを大使公館の晩餐に招待した。米国側からメルロイ米8軍司令官などが出席した。米国側としては朴正煕議長が民政に不参加を宣言し金鍾泌を海外へ出国させたから、対韓工作に成功したわけだが、ぎくしゃくした韓米関係を円満にしようという意味で準備した夕食会だった。晩餐辞が交わされ乾杯があった後、朴正煕議長がバーガー大使に「大使に急に相談したいことがあります。静かなところへ行きましょう」とぶっきらぼうに言い、席を立ち入口へ向かって歩いた。
二人は1時間が経っても戻らなかった。金顯哲内閣首班が呼ばれて行ってからも、長い時間が経った。「朴議長が大使に軍政を4年間延長すると言った」という話が晩餐会場に広がった。米大使館関係者がこの緊急事態をワシントンに報告するため晩餐会場を離脱した。
最高会議議長公館に戻った朴正煕は、重要最高委員たちを招集して腹案を説明した。
「私は米国大使に、軍政4年延長案を国民投票に回付すると通知しました。李厚洛室長は軍政の延長を提案する文案を作成しなさい。そして混乱を収拾するため、政党活動の禁止、言論・出版・集会の制限を規定した『緊急事態収拾のための臨時措置法』ができているから、最高会議で通過させてほしい。明日発表しましょう」
駐韓大使の報告を受けたラスク国務長官は16日、訓令を送った。
<韓国軍首脳部の態度が分からない状態で、最終的な判断を下す状況ではないが、即時措置が必要と判断したら、貴下は、米国政府を代表して朴正煕議長に次の措置をとることができる。
a,米国政府は、軍政4年延長案について承認できないだけでなく、公開的に反対するかもしれない。b,この措置は、朴議長が繰り返し言った民政移譲の約束に背馳するだけでなく、特に1961年11月14日のケネディ大統領との共同声明の内容にも反する。c,この措置は世界から糾弾される。d,米国政府は、韓国に対する援助を根本的に見直さざるを得ない。e,朴議長に翻意の時間を与えるため公開的コメントはしないように>
(つづく)


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