平壌を動かしているのは誰か

金正恩体制を見る2つの観点
日付: 2020年09月09日 00時00分

 韓半島の分断構造が米中戦争によって終息する方向に動いている。一方、平壌の極端な邪教全体主義独裁体制で、あり得ぬことが連続的に起きている。もちろん、北側の体制耐久力は消尽して久しい。現在、外部から見たとき異変(混乱)と受け止められるのは、主に人事に関連したことだ。振り返れば、異変が目立ち始めたのは昨年のハノイ会談以降だ。絶対権力者の金正恩の自己批判と反省があった。昨年末の4日間の労働党中央委全員会議の後、混乱がさらに増した。核武装した失敗国家が崩壊に向かう異変には、厳密な対応が求められる。問題は平壌の状況に対する診断と対応が、見る観点によってその差が余りにも大きいことだ。

 平壌の異変に対する観察者の結論は二つに分けられる。過去1年間の人事(異変)は金正恩の絶対権力の結果という多数派と、金正恩は権力を失い、新しい実力者たちが水面下で動いていると解釈する少数派だ。
この1年半の間、北側がどれほど混乱したかを見よう。金正恩は、ハノイでのトランプ大統領との談判で難局打開に失敗した。平壌に戻った彼は、自己反省をした。北側は恐喝したが、トランプ大統領の対北圧迫は強化されるばかりだ。北側は、状況の打開ができなければ、内部不安が爆発しないよう弾圧を強化するしかない。
金正恩は米国を恨む前に、自らが墓穴を掘ったことを反省せねばならない。金正恩は張成沢処刑後も、側近とすべき部下たちを粛清・処刑した。結局、金氏王朝の元老たちをはじめ、党組織指導部、総政治局、軍部など、自分を護ってきた護衛司令部の指揮部まで粛清してしまった。極端な恐怖統治の結果、妻と妹と、玄松月など、経験もないごくわずかな血族と側近だけが残った。皆、首領を恐れる。
誰もが否定できない事実は、首領が健康でないこと、国際社会の対北圧迫は強化されるだけであること、米国の対北圧迫を緩和させる能力のない文在寅集団は、すでに平壌を救うより、自分たちが生き残るため中国に傾いたという真実だ。
そして武漢ウイルスパンデミック事態が北韓を襲った。防疫能力の乏しい北韓は、国境を閉鎖するしかないが、密貿易まで閉鎖すれば、飢えて死ぬ。
核心層、側近たちまで収奪している金正恩は、韓流と韓国製品の使用を厳しく禁じている。国境はもちろん、外国との通信も徹底的に遮断している。子供が韓国ドラマを見るのも厳罰に処する。首領は資本主義社会の最も堕落したロッドマンを友達と呼んだというのに。
8月19日、急遽招集された党中央委全員会議は、統治機構の重大な変化を決めた。金正日時代には飾りに過ぎなかった党中央軍事委や政治局は、もう飾りでなくなった。驚くべきことに軍総政治局を監督する軍政指導部を公式化し、張成沢処刑後に解体した組織行政部が復活した。経済の失敗で8月13日に解任された金才龍総理が1週間後、組織行政部長になり(韓国のデイリーNKが9月2日報道)、前組織指導部長の李萬建など粛清された者らがまた起用される。急速に浮上した李炳鉄などや、金正恩の後継のとき一緒に登場した金英哲など少数の幹部も生き残っている。
9月1日付の労働新聞と民主朝鮮は、1面に党副委員長が水害地を訪ね「指導」したと報じた。金正恩の記事は4番目になった。そもそも労働新聞は、党の機関紙ではなく、首領の新聞だ。首領が1面トップを部下たちに譲れるのか。いくら金正恩が直接許したとしても、後遺症を心配すべき宣伝扇動部ができるだろうか。何よりも、金英哲と李炳鉄は果たして実力者だろうか。
そういえば、いつからか金正恩(首領)の名前の大きさや字体が普通になった。平壌を観察する「専門家」たちは、昔から、独裁体制を認めるいわゆる「内在的接近法」の現実優先の専門家と、文明史の観点から野蛮な全体主義体制を冷静に診断する専門家に区分される。
朝鮮労働党の在日支部である朝総連の機関紙は、平壌の指示が遅れるせいかよく迷走する。その在日党の機関紙の4日付も、1面に李炳鉄などの水害地写真を載せ、金正恩は6面だった。平壌からの指示のはずだ。
もちろん、先月まで首領たちの名前をゴシック体にしている雑誌も確認される。金正恩が何らかの動機であって、党と部下と人民を配慮する指導者に変身したか、それとも実権を握った集団指導体制が登場したか。
金融制裁で平壌へ忠誠資金を送金できない者らが、金正恩の統治資金を持って姿をくらましたという話も伝わってくる。
8月25日の社会安全省の布告は凄まじい。金正恩の命令違反で、連座制で多くが処刑されているという。平壌の官営媒体は5日、金正恩が咸鏡南道に行って道党委員長を更迭するなど、水害復旧を現地指導したといい、専用列車内での政務局拡大会議の光景を報じた。水害地で鉄道だけは無事だったのだろうか。


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