ウイグル人強制労働の闇

メディアに欠ける“米中戦争”の視点
日付: 2020年09月02日 00時00分

 日本ウイグル協会は8月28日、日本を拠点とする国際人権NGOのヒューマン・ライツ・ナウと協力して、ウイグル自治区における強制労働の実態と日系企業の関与についての記者会見を厚生労働省で行った。会見では強制労働への関与が示唆された企業の対応や、今後の展開などが焦点となった。

当事者意識の低さ浮き彫りに

2017年以降、中国の新疆ウイグル自治区で「再教育」の名目で行われている強制収容はかつてない規模に及んでいる。数々の国際的なシンクタンクや国の調査機関などによれば、強制収容所に隔離されたウイグル人、テュルク系民族などは300万人を超えると言われている。残された住人たちも強制的な不妊手術・母語や独自文化の放棄・臓器狩りなどの被害に遭っているとされており、「ナチスのホロコースト以上だ」とする声も大きい。
ウイグル人の強制労働に関連する質問状に、日本の各企業がどのように対応したかを説明した
 17~19年の間に8万人以上のウイグル人が中国各地の工場に移送された。これと関連して、豪州シンクタンクのオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は今年3月、「売り物のウイグル人―新疆地区を越えての『再教育』、強制労働と監視―」と題した報告書を発表した。この報告書によるとASPIは、中国内9地方27カ所の工場で強制労働を確認しているという。
今回の記者会見で焦点が当てられたのは、下請けなどの一環として関与が指摘された、83の有名企業に含まれる日本企業11社(日立製作所、ジャパンディスプレイ、三菱電機、ミツミ電機、任天堂、パナソニック、SONY、TDK、東芝、ユニクロ、SHARP)だ。
日本ウイグル協会が4月30日、これら11社に対しウイグル人の強制労働に関与していると示唆されたことなどについて見解を求めたところ、10社がこれに応えた。そのうち、3週間の期限内に回答したのは3社で、パナソニックに関しては現在(先月28日時点)も無回答であるという。
日本ウイグル協会のレテプ・アフメット副会長は、期限内に回答のなかった企業に関し、「(無回答であるとの)結果を日本ウイグル協会のHPで確認した消費者や株主が、直接企業に問い合わせをしたところ、後から回答があった」と明かした。企業内で強制労働問題が軽視されている実態が浮き彫りになった形だ。
HRNの伊藤和子事務局長は企業側の対応に関し、「質問に完全に回答しているとは言えない」と指摘。「2次・3次、あるいはさらに下請けの業者までさかのぼって」事態を究明すべきだ、と主張した。
会見の場に同席した理事のグリスタン・エズズさんは「11社以外にも強制労働に関わっている企業は存在すると思う」と話す。
「強制収容所から、マスクや防護服を作っている工場に移送されたという情報がある。日本にはコロナ騒動で中国産のマスクも入ってきていると思うが、それらが強制労働によって生産された可能性もある」として、もはや一個人でさえ無関係ではないと強調した。
中国問題、特にウイグル問題となると途端に矛先が鈍ると批判される日本のマスメディアは、「米中戦争は利害ではなく生き方の問題である」という観点が決定的に欠けている。
複雑な階層構造をたどる資材のサプライチェーンは、独力で洗い出すことは困難だ。問題の解決にあたるためには、ウイグルをはじめ中国共産党が関与する非人道的な所業の数々が広く周知され、世論が動く必要がある。メディアの責任が重く問われる部分だ。


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