東京測地系→世界測地系 コロナ後の韓国経済戦略

半導体がけん引する景気回復のシナリオ
日付: 2020年07月15日 00時00分

 韓国では昨年末、5Gの普及と第4次産業革命の進展に支えられて半導体の輸出が伸び、2020年には景気回復が進むと予想された。
このシナリオを狂わせたのがコロナショックである。中国で始まった新型コロナウイルスの感染が世界中に広がるなかで、各国で外出自粛やロックダウン措置がとられ、国境を越えた人の移動がほぼストップした。韓国への訪問客数は3月以降90%以上の減少となり、輸送・観光業界が打撃を受けている。
外出自粛によって消費が落ち込んだほか、自動車業界では中国製ワイヤーハーネスの調達が滞り、一時的ながらも生産休止に追い込まれた。民間消費と輸出(とくに観光サービス輸出)の急減により、今年1~3月期の実質GDP成長率は前期比△1・4%となった。
就業者数が4月、5月に前年同月より30万人以上減少し、失業率(季調済み)が4月の3・8%から5月に4・5%へ上昇するなど雇用が悪化したこと、海外経済の減退で輸出の低迷が続いたことから、4~6月期の成長率は一段と低下するものと予想される。
景気が急速に悪化したため、韓国政府は5月までに2回の補正予算を組んで緊急経済対策を実施した。第2次では、1世帯当たり最大で100万ウォン(9万円弱)の支援金を支給した。さらに6月、雇用助成金の増額を含む第3次補正予算を組んだ。計3回にわたる補正予算の規模はGDPの約13・1%に相当する。企画財政部が発表した「20年下半期の経済政策」では、コロナショック後の経済を立て直すために、5GネットワークやAIの強化を含むデジタルニューディールを推進することが盛り込まれた。他方、韓国銀行は5月末、3月の0・5%の利下げに続き、0・25%の利下げを実施した。
このように、韓国政府は財政・金融政策により景気の悪化を食い止める構えである。
厳しい経済環境が続くなかで注目したいのは、半導体の需要が比較的堅調に推移していることである。輸出額の約2割を占める半導体は昨年秋口より急回復し、今年2月に前年比プラスに転じたものの、コロナショックにより3月、4月に再び前年水準を下回った。しかし、5月にプラスに転じ、6月もほぼ前年並みとなった。半導体の最大輸出先である中国(19年は全体の46・6%、ついで香港26・0%)をみると、中国での経済活動再開に伴い5月に著しく伸びた。
半導体に対する需要が増加している背景には、世界的にコロナショック後の在宅勤務の増加や電話会議、オンライン授業の広がりに伴いデータ通信量が急増し、データセンターが増設されていることがある。
これに関連して、SSD(19年の輸出額に占める割合は0・9%)が昨年10月に前年比プラスに転じ、20年1月以降は100%以上の伸びが続いている。SSDは記憶媒体にNAND型フラッシュメモリを用いたドライブ装置で、ハードディスクドライブと比較して、高速で消費電力が少ないため、2010年代に入ってデータセンターなどで使用されるようになった。昨年秋から伸び始めたのは、大手IT企業によるデータセンター設置の動きが活発化したためである。SSDの輸出先は4割近くが米国、2割強が中国である。
サムスン電子は今年5月、平澤工場にEUV専用のファウンドリー生産ラインを建設すると発表したのに続き、6月には同じ平澤工場にNAND型フラッシュメモリの生産ラインを建設すると発表した。同社にしてみれば、米国の経済制裁により中国企業の生産計画が思うように進まない間に、NAND型フラッシュメモリ市場で圧倒的に優位な立場に立つ狙いがあると考えられる。
裾野の広い自動車産業の不振が当面続く可能性が高いので、半導体だけでは景気回復の牽引車としては不十分であるが、今後の動きに注目したい。
(日本総合研究所 向山英彦)


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