【ドラマ】仮想現実の功罪『愛の不時着』

日付: 2020年07月01日 00時00分

 韓国ドラマ「愛の不時着」が爆発的な人気を呼んでいる。テレビではなく、インターネット配信だ。韓国の財閥令嬢が乗るパラグライダーが突風による事故で、北韓に不時着した。北韓将校がその女性を隠して守るうちに愛が芽生えるという物語だ。
外に門戸を開放していない北韓の実情を知る者にとっては、そのような愛が芽生える素地など100%あり得ない話であり、現実にはスパイとして収監されるのが落ちだろうと考えてしまう。北韓の実情を無視し美しい仮想現実を見せるのは、視聴者を欺く以外の何物でもない。
その一例が、寒村に暮らす主婦たちがチウプシダ(コンペ)といって、干しダラと缶ビールで楽しげに飲み食いしている場面だが、食料危機難にある北韓では考えられない現実だ。問題は、そのような仮想現実を作り上げた意図がどこにあるかということだが、文在寅政権に迎合し大衆を欺くためではないことを願うのみだ。
北韓では韓国の制作スタッフがドラマを撮影することはできない。にもかかわらず、北韓の多様な場所が出てくる。パラグライダーが非武装地帯(DMZ)の林に不時着したが、そのシーンを撮影したのは、韓国済州市の我羅洞の山だという。
平壌駅は、モンゴル・ウランバートルで撮影されたという。ほかに開城駅や汽車のシーンも同地で撮影されたということだ。軍隊関係の撮影地は江原道横城郡で、韓国の軍隊関連の映像が撮れる場所だからだという。北韓の村は、実際のロケ撮影ではなく、セットを建設しての撮影だったという。
財閥令嬢が韓国に帰る前に、北韓の部隊員らとピクニックをするシーンがあり、その撮影は忠清北道忠州市ピネソムだったそうだ。ピネソムは釣りやキャンプを楽しんだり、渡り鳥や夕焼けの写真を撮ろうとしたりする忠州市の代表的な観光名所だ。忠州市のムジゲも撮影場所で、ムジゲ道は、弾琴湖の静かな自然の風景を楽しみながら、南漢江に沿って歩くことができる遊歩道だ。
視聴者がそうした映像を通して、北韓も韓国と同じように自由があり、自由に往来できる民主的な社会だと錯覚することに恐ろしさを感じる。北韓は、大多数の民が弾圧され搾取され、飢え死にする社会である。彼の地が地獄であることを知るなら、このような仮想現実を提供することに、人間として抵抗を感じるはずだ。
それが表現の自由というなら、北韓がその自由をいかに抑圧し、圧殺しているかを知るなら、良心の呵責にさいなまれることになろう。全ての基本は、民が国家に抑圧されないで、自由でなければならないということだからだ。(韓登)


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